牧野城 (三河国)

牧野城の歴史と発掘調査

牧野城（まきのじょう）は、日本の中世に築かれた城で、愛知県豊川市の牧野町丁畑付近に位置しています。15世紀頃、田蔵系の牧野氏によって築城されたとされており、城は四国から移り住んだ豪族によって建設されました。この城は、豊川市の指定文化財にも指定されており、地域の歴史と文化を代表する重要な遺産です。

築城の背景

牧野城は、豊川の流れに面した自然堤防を利用して築かれたと考えられています。城主の地位は、三河国宝飯郡の有力者である牧野成富とその子、牧野古白入道の親子二代が担っていました。成富は四国の田口氏の一族と関係があり、宝飯郡中條郷の牧野村に土着し、地元の豪族として名を馳せました。

成富の子である古白は、共通の主君である一色時家の長山一色城を占領した波多野全慶を明応2年（1493年）に討ち取り、長山一色城に入城しました。さらに彼は瀬木城の築城も行い、彼自身の勢力拡大を推進していきました。しかし、城主古白は後に今川氏に仕官し、永正2年（1505年）には渥美郡の豊橋市に今橋城を築いて本拠を移しました。そのため、牧野城はこの時期に廃城となったと伝えられています。

文献と資料

現在、牧野城についての具体的な史料はあまり残っていませんが、「牛窪密談記」や「宮嶋記」といった後の史料にその名が見られます。これらの文献は、城主や城の運営に関する貴重な情報源となっています。また、現地の土地改良区による農地の整備により、往時の面影は薄れてしまいましたが、遺構の一部は残されています。特に、土塁は平成7年（1995年）2月13日に豊川市の文化財として指定されました。

発掘調査の結果

1993年の5月から、豊川市教育委員会は牧野城の本丸跡を中心に約3000平方メートルの発掘調査を実施しました。この結果、本丸と推測されるエリアの北・西・南側から堀跡が発見され、城の規模は南北約102メートル、東西は北堀で約72メートル・南堀で約84メートルという台形を成していることが確認されました。

また、発見された堀の幅は4〜5メートル、深さは2.5〜3メートルに及び、土塁の東側には新たな堀も見つかりました。これによって、牧野城が本来は主郭を囲む土塁と周濠を持つ掻揚城であることが明らかになりました。さらに、東側外堀に見られたW形の堀底は、甲斐の武田氏の築城法に似ているとされ、「今川氏と関わりの深い牧野氏にどのように武田氏の築城術が導入されたのか」という新たな疑問を提示しました。

現在の状況

発掘調査の結果、想定された牧野城の縄張りは、これまでの理解とは大きく異なることが分かりました。ただし現在、圃場整備が進んだ結果、土塁を除いて牧野城の遺跡はほとんど消失してしまいました。かつての城の姿を想像するのは困難ですが、そこにあった歴史と文化は間違いなく地域に根付いています。

終わりに

牧野城は、その歴史的な背景と発掘によって明らかにされた情報により、愛知県の文化遺産としての価値を持ち続けています。今後、さらなる調査や研究が進むことで、新たな発見があることが期待されます。

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