犬塚弘

犬塚 弘（いぬづか ひろし）

犬塚弘は、1929年に東京府荏原郡大森町（現在の東京都大田区）で生まれ、2023年に逝去した日本の俳優およびベーシストです。彼は、1985年に結成されたコミックバンド「ハナ肇とクレージーキャッツ」の最後の存命メンバーとして知られ、昭和、平成、令和の三つの時代にわたる活動を行っていました。彼の最終所属は境事務所で、多くの人々に愛され、尊敬されていました。

家族背景と教育

犬塚家は、代々裁判官を輩出した家系で、彼は江戸っ子の16代目に該当します。また、彼の祖先は徳川家康に仕えていた直参の旗本であり、家族はかつて東京の第一ホテル周辺に大地主として住んでいました。父親である犬塚登は貿易商として海外に多く出かけていたため、若い頃からジャズやハワイアン音楽に触れる機会が多く、音楽への興味が育まれました。

教育については、暁星中学校を経て、陸軍飛行学校に進学。その後、1949年に文化学院の社会学部を卒業します。大学在学中には、羽仁五郎や神近市子といった著名な教育者から学びました。

音楽活動と俳優デビュー

大学卒業後、IBMに入社しますが、アメリカ人の同僚からのいじめを受けたことをきっかけに、わずか2年で退社しました。その後、1951年に兄が結成したハワイアンバンド「グリーン・グラス・キャップ・ボーイズ」に参加し、ベーシストとしての道を歩み始めました。この楽団での活動を通じて、彼の音楽の腕前はさらに磨かれました。

1952年には与田輝雄の勧めでデューク・オクテットに加入、モダンジャズを演奏するようになりますが、ジャズの既成概念には馴染めず、1955年にはハナ肇の誘いで「ハナ肇とキューバン・キャッツ」を結成し、クレージーキャッツの一員として活動を始めました。彼のウッドベース演奏は多くのファンに支持されました。

俳優としてのキャリア

犬塚はクレージーキャッツのメンバーとして、テレビや映画で大活躍しました。代表的な作品には、テレビ映画『シャボン玉ホリデー』があり、エンディングでのシルエットは彼自身です。彼はコミカルな役柄だけでなく、シリアスな役の演技にも挑戦し、特に1970年以降は喜劇以外の作品にも多く出演しました。

例えば、舞台や映画では宇野重吉との共演や、さまざまな劇団での経験を積み、演技の幅を広げていきました。彼は特に基礎演技を重視し、演技の質を追求しました。

プライベートと晩年

犬塚は、クレージーキャッツのメンバーと特に強い絆を持ち、谷啓とは下戸という共通点を通じて親密な関係が築かれました。彼はずっと仲間を思いやる姿勢を持ち続け、仲間の死に際しても深い感情を隠しませんでした。2020年、体調を崩し俳優業からは引退を表明しますが、芸能人としての活動は続ける姿勢を示しました。

2023年10月27日、静岡県熱海市の病院で彼の逝去が報じられました。彼の死去により、クレージーキャッツのメンバー全員がこの世を去りましたが、その功績は今後も多くの人々の心に残り続けることでしょう。

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