犬糸状虫症

犬糸状虫症とは

犬糸状虫症（いぬしじょうちゅうしょう）とは、フィラリアの一種である犬糸状虫（Dirofilaria immitis）が原因となる感染症です。この寄生虫は、主として犬の肺動脈や右心室に寄生し、循環器系に障害をもたらすことがあります。一般的には犬フィラリア症とも呼ばれ、この病気は他の動物、たとえばネコ科やクマ科、フェレットなどにも感染する可能性があるため、広範囲な注意が必要です。

感染のメカニズム

犬糸状虫は、トウゴウヤブカなどの蚊を中間宿主として循環系に入り込みます。蚊が感染した血液を介して犬に寄生虫の幼虫を媒介することで、感染が成立します。犬が蚊に刺されることで幼虫が体内に入り、成虫へと成長し、主に肺動脈や心臓に到達します。これらの寄生虫は血流を通じて移動し、ついには宿主において繁殖を行います。

症状と影響

犬糸状虫が肺動脈に寄生している場合、実際には約2/3の犬が無症状であることが報告されています。しかし、病気が進行するにつれて、症状が現れることがあります。軽度の症状としては咳が見られ、中等度では可視粘膜の蒼白、運動不耐性（運動能力の低下）、呼吸困難が起こることがあります。さらに重度の場合には腹水や皮下浮腫、収縮期雑音、頸動脈拍動といった、より深刻な状態がみられるようになります。

診断と治療

犬糸状虫症の診断には、ミクロフィラリアの検出が最も確実な方法とされています。ただし、オカルト感染（隠れた感染）に注意を払う必要があります。診断が確定すれば、治療が行われます。治療方法には外科的成虫摘出や、メラルソミンなどの薬剤による成虫の殺滅、さらにジチアザニンなどの薬剤によるミクロフィラリアの殺滅が含まれます。

予防策

犬糸状虫症の予防策には、イベルメクチン、ミルベマイシン、モキシデクチンなどの薬剤が一般的に使用されます。これらの薬剤は犬に投与することで、蚊を介した感染を防ぐことができます。

特殊なケース

また、心奇形が存在する犬では、左右の血流の短絡が起こり、虫体が左心系に移動する場合があります。こうした場合、動脈塞栓が生じ、奇異性塞栓症を引き起こす危険性があります。犬を飼う上で、この病気についての知識を深め、予防に努めることが大切です。

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