狩野山楽

狩野山楽（かのう さんらく）

狩野山楽（1559年 - 1635年）は、安土桃山時代から江戸時代初期にかけて活躍した狩野派の絵師です。狩野永徳の門下に入り、その画風を継承しつつ、独自の装飾性と雄大な構図を取り入れた作品を数多く残しました。豊臣氏に仕えた後、九条家の庇護を受け、京都に留まり京狩野の祖となりました。

生涯

山楽は、近江国蒲生郡（現在の滋賀県）に木村光頼の子として生まれました。幼名は平三。父は狩野元信に絵を学んでおり、山楽も幼い頃から絵に親しんでいました。

15歳の時、織田信長によって浅井氏が滅ぼされると、豊臣秀吉に仕え、秀吉の命により狩野永徳の門下に入りました。永徳の才能に触発され、急速に画技を上達させ、永徳の右腕として活躍するようになりました。正親町上皇の仙洞御所障壁画制作にも参加し、その才能を発揮しました。永徳の死後、秀吉の命により東福寺法堂天井画を完成させ、後継者としての地位を確立しました。

豊臣氏の絵師として、大坂城や伏見城などの障壁画制作に携わりました。秀吉の息子である豊臣秀頼にも仕え、四天王寺や金剛寺などの寺社に多くの作品を残しました。この頃から「山楽」を号するようになったとされています。

大坂の陣で豊臣氏が滅亡すると、豊臣恩顧の絵師として徳川幕府から追われる身となりましたが、九条幸家の助命嘆願により赦免されました。その後は、九条家を中心に、多くの公家や寺社から制作の依頼を受けるようになり、京都を中心に活動を続けました。二条城の障壁画制作にも参加し、狩野派の中でも重要な地位を占めるようになりました。

晩年は、筆力の衰えから弟子に代作させることもありましたが、寛永12年（1635年）に77歳で亡くなるまで、精力的に制作活動を続けました。

画風と影響

山楽は、永徳の画風を継承しつつ、大胆な構図と鮮やかな色彩、装飾的な表現を特徴とする独自の画風を確立しました。特に、金箔や截金（きりかね）を多用した豪華な装飾は、山楽の作品の大きな魅力となっています。また、山水画や花鳥画、人物画など、幅広いジャンルを手がけ、それぞれの分野で優れた作品を残しました。

山楽の画風は、後世の絵師たちに大きな影響を与えました。特に、山楽の養子である狩野山雪は、山楽の画風を忠実に継承し、京狩野の基礎を築きました。また、江戸時代中期には、曾我蕭白などの絵師が、山楽の画風を再評価し、新たな表現を追求しました。

代表作

南禅寺本坊大方丈障壁画：正親町上皇の仙洞御所障壁画の一部で、山楽の初期の代表作。
伏見城本丸御殿障壁画：現在は正伝寺方丈に移築され、山水図として現存。
妙法院 繋馬図絵馬：豊国神社に奉納された絵馬。
西本願寺 鷙鳥図屏風：大胆な構図と力強い筆致が特徴的な作品。
二条城二の丸御殿大広間四の間障壁画 松鷹図：近年、山楽の作品と判明した。
大覚寺 宸殿 紅梅図襖、牡丹図襖：鮮やかな色彩と装飾的な表現が美しい作品。

家族と弟子

長女：竹（狩野山雪室）
長男：狩野光教
次男：狩野伊織
養子：狩野山雪
孫：狩野永納
弟子：狩野山雪、狩野伊織、狩野山卜、狩野三甫

山楽の息子である狩野伊織は長らく謎の存在でしたが、近年、その作品が発見され、山楽の画風を継承した絵師であることが判明しました。

京狩野

狩野山楽は、狩野派本家が江戸へ移った後も京都に留まり、独自の画風を確立しました。その系統は京狩野と呼ばれ、山雪、永納へと受け継がれました。京狩野は、永徳の画風を最も良く継承しており、大画面を得意とし、装飾性と雄大な構図を特徴としています。

山楽の作品は、日本の美術史において重要な位置を占めており、その独特な画風は、今も多くの人々を魅了し続けています。

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