独立性易

独立性易（どくりゅう しょうえき）

独立性易（1596年 - 1672年）は、中国・明末から清初にかけて活躍し、後に日本へ渡来した臨済宗黄檗派の禅僧です。その才能は多岐にわたり、書道、水墨画、篆刻に優れていただけでなく、医術にも長けていました。彼は日本における唐様書道の流行を準備し、文人画の先駆けとしても重要な役割を果たしました。

生涯

独立性易は、万暦24年（1596年）に中国の浙江省杭州府仁和県で生まれました。俗姓は戴（たい）。幼少の頃から学問に秀で、書物を一読すればすぐに暗記できたと言われています。しかし、科挙の形式的な文体を好まず、独自の道を歩むことを選びました。

明が滅亡し清が台頭する中、彼は故郷を離れ、長水の語渓に移り住み、医術を生業としました。承応2年（1653年）に気晴らしのため乗船した船が長崎に着岸。鎖国体制下の日本で抑留されるも、その才能を惜しんだ長崎奉行の甲斐庄喜右衛門の尽力により滞在を許されました。

長崎では、同じく亡命していた朱舜水と交流し、明の再興について議論を交わしました。その後、隠元隆琦との出会いをきっかけに仏門に帰依し、「独立性易」と名乗るようになります。隠元と共に江戸へ上り、老中・松平伊豆守信綱に才能を認められましたが、長崎へ戻り、興福寺幻寄山に籠って書論を著し、篆刻の新しい印法を伝えました。

幻寄山での修行後、長崎奉行所に仕え、医者として各地を巡りました。福岡藩や岩国藩などへ赴き、藩士や大名の治療にあたりました。特に岩国藩主・吉川広嘉との交流は深く、錦帯橋の創建にも間接的な影響を与えたとされています。

寛文11年（1671年）には、師である隠元に会うため宇治へ向かうことを希望しましたが、その途上で体調を崩し、寛文12年（1672年）に崇福寺広善庵で入寂しました。享年78歳。

業績と影響

独立性易の業績は多岐にわたりますが、特に書道、水墨画、篆刻の分野での貢献は大きく、日本文化に深い影響を与えました。

書道： 中国伝統の本流である書を日本に伝え、後の唐様流行の基盤を築きました。
水墨画： 禅僧でありながら文人気質に富み、日本文人画の先駆けとなる水墨画を残しました。
篆刻： 日本篆刻の祖として称えられ、明代の新しい篆刻を伝え、日本の篆法を一新しました。

独立性易は、異国の地でその才能を発揮し、日本の文化・芸術の発展に大きく貢献した人物として、今も高く評価されています。

著作

『斯文大本』
『一峰双詠』
『西湖懐感三十韻』
『就庵独語』
『東矣吟』
『痘疹百死伝』
『痘科鍵口訣方論』

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