猪俣健

猪俣健（いのまた たけし）: 日本の考古学者

猪俣健は、日本の著名な考古学者であり、マヤ研究の第一人者として知られています。東京都に生まれ、東京大学で考古学を学ぶ彼は、1983年から1985年にかけて青年海外協力隊としてホンジュラスのコパン県で発掘に従事しました。1986年に大学を卒業後、1988年には東京大学で文化人類学の修士号を取得。その後、渡米し、ヴァンダービルト大学でアーサー・デマレスト教授の指導の下、グアテマラのペテシュバトゥン地方、特にアグアテカの考古学的調査に取り組みました。1995年には博士号を取得しました。

彼のキャリアは、1995年にイェール大学の助教に就任したことから本格的に始まりました。2000年にはアリゾナ大学に転任し、そこで教授に昇進しました。1996年から2005年の間には、国際的な考古学調査団の団長としてアグアテカでの調査を指揮しました。この発掘では、アグアテカが破壊され、住民が貴重品を残して逃げた痕跡が明らかになりました。このように、古典期マヤ文明における都市放棄について詳細なデータが記録されたことは、考古学の重要な発見の一つです。

また、2013年には、セイバルの宗教施設が紀元前1000年に遡ることを発見し、マヤ文明の新たな理解を促進しました。この成果は北米の考古学界で注目され、世界考古・上海論壇で「世界フィールド考古学の十大発見」の一つに選ばれました。2018年には、メソアメリカ考古学の分野で顕著な業績を挙げたとして、グアテマラのポップ勲章を授与されました。

2017年以降はウスマシンタ川中流域の考古学プロジェクトを主導しており、2020年には国際的な調査団を編成し、LIDAR技術を駆使してメキシコのタバスコ州で新たなアグアダ・フェニックス遺跡を発見しました。この遺跡は紀元前1000-800年頃のもので、長さ1400メートル、幅400メートルに及ぶ巨大な構造を持ち、マヤ地域において最も古い建築物の一つとされています。

さらに、2021年にはオルメカ及びマヤ地域低地西部で478の遺跡を発見し、それぞれの集落に特別な配置が見られることを報告しました。これにより、メソアメリカにおける社会構造や文化の発展に新たな視点を提供しました。

猪俣健の研究は、著書や翻訳を通じても広範囲にわたります。彼の主な著書には、『メソアメリカの考古学』や『Royal Courts of the Ancient Maya』、また『Archaeology of Performance』などがあります。これらの著作は、考古学の学術的議論において重要な参考文献とされています。

彼はまた、マイケル・D. コウが著した『マヤ文字解読辞典』を監修し、訳者としても貢献しており、学界における彼の影響力は広がっています。猪俣健の業績は、今後の考古学研究やマヤ文明の理解に大きな影響を与えることでしょう。

もう一度検索