猪俣津南雄

猪俣津南雄（いのまた つなお）

猪俣津南雄は1889年に新潟県新潟市で生まれ、日本の経済学界における重要な人物の一人です。彼は特にマルクス経済学において労農派の一翼を担った論客として知られています。

経歴

猪俣は長岡中学校を卒業後、家計の困窮が影響し、早稲田大学専門部政治経済学科に編入しました。1913年に卒業すると、研究科に進学しながら、東京外国語学校の夜間に通うなど、学問の道を切り拓きました。1915年、郷里の篤志家の援助を受けて渡米し、ウィスコンシン大学の大学院で農業、経済学、哲学を学びました。1921年に帰国し、早稲田大学に講師として就任し、経済学史や農業政策を指導しました。

彼はその後、日本共産党に入党し、活動を通じて過激化する政治情勢の中に身を置きます。しかし、党内での意見の相違からは退党を余儀なくされ、その後も在野の学者として研究を続けました。1937年には人民戦線事件により逮捕されましたが、腎臓の健康が悪化し、1942年に東京都青山の自宅で没しました。

家族

アメリカ滞在中の猪俣は、大学院の同級生ベルタ・ゲールと結婚しましたが、後に離婚しました。ベルタはポーランド系ユダヤ人で、共産主義に近い思想を持っており、猪俣の思想に影響を与えました。離婚後、猪俣は『婦人公論』の元編集者である大塚倭文子と再婚し、彼女と共に家庭を築きました。倭文子は猪俣の死後、弟子である高野実と再婚し、子供たちも持ちました。

著作

猪俣津南雄は多くの著書と翻訳を残しています。代表作には『金融資本論』や『日本無産階級運動の批判』などがあり、マルクス経済学の立場から日本の経済状況を分析しました。また、彼は外国の経済理論書の翻訳も手掛け、その中にカール・マルクスの著作も含まれています。彼の研究は、戦間期における日本の経済学界において重要な役割を果たし、今なお研究者たちに影響を与えています。

猪俣津南雄の業績は、農業問題、経済政策、そして社会主義思想の分野で層が厚いものであり、彼の思想は今なお現代の経済学にも影を落としています。彼の死後、多数の後継者や研究者たちによってその業績は引き継がれ、広められています。

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