高野実

高野 実の生涯と労働運動

高野 実（たかの みのる、1901年1月27日 - 1974年9月13日）は、日本の著名な労働運動家であり、戦後日本の労働組合の構築に多大な貢献をしました。元日本労働組合総評議会（総評）事務局長として、その活動は今もなお労働運動に影響を与え続けています。

生い立ちと早期の活動

高野は東京市の内幸町に生まれ、麻布中学校を経て1918年に早稲田大学高等予科に入学しました。そこで彼は講師であった猪俣津南雄の影響を受け、労働運動への道を歩むことになります。1921年には早稲田大学の理工学部応用化学科に進学し、同年中に学内に社会主義の学生団体「文化会」を設立しました。彼は事務局長に就任し、学費削減や教授の無能を訴えた運動を展開しました。

また、彼は1922年に「学生連合会」の事務局長を務め、全国規模での学生運動を支援しました。その頃、高野は日本共産党に入党し、1930年代には労働運動に関わり始め、全国的な組織を構築しました。1934年には日本労働組合全国評議会（全評）の設立にも携わり、組織部長を務めるようになります。しかし、その後の人民戦線事件により苦境に立たされました。

戦後の活動と総評の設立

戦後、高野は1946年に全国金属産業労働組合同盟の主事に就任し、1948年には総同盟の総主事に選ばれました。彼は共産党系の労働組合との対話を通じて労働運動の民主化を進め、1950年に日本労働組合総評議会の設立に尽力しました。総評はGHQの意向に沿って発足しましたが、高野の指導の下で、左への大きな舵取りが行われました。彼は「平和4原則」を採択し、労働者の利益を守るための運動を展開しました。

その後、高野は破壊活動防止法や内灘基地反対運動に積極的に関与し、政治活動にも力を入れました。彼は総評を「民族の苦悩の担い手」として位置づけ、左派社会党への支持を強めていきました。しかし、1953年頃から、彼のリーダーシップに対する異論が生じ、内部分裂が始まります。

高野総評時代の終焉

1953年、高野は総評第四回大会で、米国を戦争勢力とし、ソ連・中国を平和勢力と見なす「平和勢力論」を提唱しましたが、左派の幹部との対立を招きます。また第26回衆議院議員選挙では、自由党の過半数割れに基づく野党連合政権樹立を呼びかけますが、これが左派の独自性を損なうとして党内での反発を招きました。

彼は経営側との矛盾を解消するため、労働者以外の層を巻き込んだ国民的運動の必要性を訴え、具体的な闘争も展開しましたが、連戦連敗の状況が続き、経済闘争に重きを置く派閥に敗北しました。1955年の事務局長選挙で彼は岩井章に敗れ、主流から外れることになります。その後、閑職に退く一方、日本共産党に再度入党しましたが、1968年には除名されてしまいます。

最後の日々

高野実は1974年に肺結核によりこの世を去りました。享年73。彼の生涯は、日本の労働運動の歴史に深く刻まれており、多くの後続の労働運動家に影響を与えています。彼の活動と理念は、現在でも労働組合運動の原点とされ、多くの教訓を私たちに与えています。

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