猿酒

猿酒（さるざけ）について

猿酒とは、自然界で発見される手を加えられていない酒のことを指します。この酒は、木の洞や岩の窪みなどに存在し、いわゆる猿が作ったとされる発酵した果実から成り立っていると言われていますが、実際には野生の猿が食料を貯蔵する習性は確認されていません。そのため、猿酒の存在自体が疑問視されることも多いのです。

ただし、自然界には多くの酵母が存在しており、たとえ果実が自然に落下しても、それが発酵することは十分に可能です。特に、サルナシという果実は猿酒の起源に関係するとされており、猿がこの果実を使って酒を作ったとされています。一方で、発酵に関するもう一つの面白い伝説として、「鶚鮨（みさごずし）」があります。これはミサゴが魚を巣にため込み、自然に発酵させるという話です。

日本の秋田県横手市では、猿を使った猿酒の伝説が存在し、古くからこのような酒が飲まれていたことがうかがえます。また、古語では果実酒を指す意味も持ち、晩秋の季語としても用いられています。日本で一般的に消費される酒は米や麦などの穀物から作られていますが、猿酒は樫や椎の実（いわゆる団栗）などのでんぷん質の多い果実を発酵させた特別な存在となっています。このため、猿酒は一般的に甘みが強く、素朴な風味を持つとされています。

国外では、例えばタンザニアで作られるウランジ（ulanji）と呼ばれる酒があります。この酒は竹の樹液が自然に発酵してできるもので、竹藪を訪れた鳥が異常行動をすることからその存在が知られるようになりました。このように、ウランジは竹酒と訳されることもあり、地域ごとに独自の発酵文化が存在することがわかります。

野生動物の飲酒文化

野生動物による飲酒の例も興味深いです。イギリスでは、発酵した果実を食べた野鳥が「酔っ払い飛行」をし、衝突死する事例が報告されています。また、ギニアでは、現地住民がラフィアヤシの樹液を集めた穴に残された樹液が自然発酵し、チンパンジーたちがスポンジ状の葉を使ってそれを飲んでいることが観察されています。これも少なからず社会的な飲酒文化を形成していると言えるでしょう。

加えて、スウェーデンでは、発酵したリンゴを食べて酔うヘラジカの話や、カリブ海の島セントキッツにおいて観光客のカクテルを盗み飲むサルの行動が報告されています。こうした事例は、人類と類人猿の飲酒文化に関する進化の過程を知る手掛かりになるかもしれません。

また、夏季や温暖な気候条件下では樹液が水分を吸収しやすく、酵母による発酵が促進されることがあります。これにより、カブトムシやクワガタ、カナブンなどの昆虫や、ハチや蝶、アリなどが樹液や糖分に引き寄せられ、多くの動物がこの自然現象を利用しています。

こうした猿酒や他の動物が酒を楽しむ文化は、生態系のいろいろな側面を深く理解する手助けとなります。自然の持つ魅力と神秘さを感じさせる事例の数々は、多くの人々にとって興味の尽きないテーマです。

もう一度検索