玄宥

玄宥（げんゆう）は、享禄2年（1529年）に生まれ、慶長10年10月4日（1605年11月14日）に没した、戦国時代から江戸時代初期にかけての真言宗の僧です。

生い立ちと修学

玄宥は下野国（現在の栃木県）の吹上城主、膝付又太郎の子として生まれました。18歳になると、根来山（現在の和歌山県）に入り、真言宗の教えを学び始めました。その後、南都（奈良）、園城寺（滋賀県）、比叡山（滋賀県）といった各地の寺院で、様々な宗派の教学を深く研究しました。当時の根来山は、6千人もの学僧が集まる一大教育機関として栄え、玄宥もその中で研鑽を積みました。

根来寺での活躍

天正5年（1577年）、玄宥は根来山に数多くあった塔頭の一つである智積院に入り、その住職となりました。さらに、小池坊専誉と共に根来山の能化職に推挙され、寺院運営の中核を担うようになります。しかし、根来寺は単なる教育機関ではなく、大量の鉄砲や僧兵を抱える軍事力も有しており、地域支配にも深く関わる宗教勢力でした。

紀州征伐と流浪

天正13年（1585年）、豊臣秀吉による紀州征伐が起こると、根来寺は焼き討ちにあい、玄宥は高野山へと逃れました。その後、京都の高雄山神護寺や醍醐寺三宝院などを転々としながら、再興の機会を伺いました。

智積院の再興

慶長5年（1600年）に豊臣秀吉が亡くなると、玄宥は再興を願い出る活動を続けました。その結果、徳川家康から智積院再興の許可を得ることができました。翌慶長6年（1601年）には、京都東山の豊国神社境内の坊舎と土地が寄進され、智積院は再興への第一歩を踏み出します。さらに翌年慶長7年（1602年）には、二百石の寄進を受け、寺院の基盤を固めました。

玄宥は、坊舎のある「上の寺」と講堂のある「下の寺」を建立し、寺名を「五百佛山根来寺智積院」と改め、自らが再興第一世となりました。再興から4年後の慶長10年（1605年）11月14日、77歳でその生涯を閉じました。

智積院と真言宗智山派

玄宥が再興した智積院は、現在では真言宗智山派の総本山として、その教えを伝えています。彼の功績は、激動の時代にあっても信仰を守り抜き、寺院を再興させたことにあると言えるでしょう。

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