玉出町
かつて大阪府西成郡に存在した玉出町は、現在の大阪市西成区中部から南部、具体的には岸里、玉出、千本の各地区にほぼ相当する地域でした。その前身は勝間村（こつまむら）と呼ばれた村です。大阪市街地の南側に位置し、明治時代までは農村地帯でしたが、大正時代に入ると大阪市に接続する利便性の高さから、住宅地および工業地帯として急速に発展し、人口が著しく増加しました。
地理
玉出町は上町台地の西側に広がる低地に位置していました。町内では、生根神社付近を指す「玉出」などの小字が住民間で通称として使われていましたが、行政上の正式な地名は設定されておらず、全町域を一括して地番表示していました。しかし、大正期に宅地化が進み転入者が急増すると、町全域を単位とする番地表示は不便となり、新たな町名設定の計画が持ち上がりました。町域の実地調査に基づく新町名案が町議会で審議されましたが、実施は延期され、結果として1925年の大阪市への編入を迎えることとなりました。市編入後、旧町域は一時「西成区玉出町」とされ、1927年1月になって改めて町名の設定・改称が行われました。
歴史
玉出町の歴史は、その前身である勝間村に遡ります。勝間村という名称の由来には諸説あり、13世紀にこの地域を開発したとされる勝間大連（こつまおおむらじ）に因むという説や、「勝玉の里（かつたまのさと）」という古称が転訛（てんか）したという説などがあります。当初は住吉郡に属していましたが、1609年に西成郡に編入されました。江戸時代には「畑場八ヵ村」の一つとして知られる農村地帯であり、大坂市街地へ蔬菜（そさい）を供給するほか、勝間木綿（こつまもめん）と呼ばれる綿花栽培が盛んに行われていました。また、木津村から勝間村を経由して粉浜へ至る勝間街道が南北に走り、紀州街道のバイパスとしての役割も担っていました。村の東部にあった勝間新家は、後に天下茶屋と呼ばれるようになりました。天下茶屋の集落は18世紀末頃に勝間村から東成郡天王寺村に編入されたと伝えられていますが、当時すでに勝間村、今宮村、天王寺村の境界付近一帯を指す広域地名としても使われていたようです。明治時代初期には、隣接する津守新田と合同で村政を運営した時期もありました。1889年の町村制施行により、改めて勝間村が発足します。明治時代後半になると、大阪市街地の拡大に伴い、市に近接する地理的条件から農村から住宅地への転換が進み始めました。人口の急増に対応するため、勝間村は1915年11月1日に町制を施行し、玉出町と改称しました。「玉出」という名称は、勝間村内にあった小字の一つから採用されたものです。その後、玉出町は1925年4月1日に大阪市に編入され、廃止されました。旧町域は、同時に市へ編入された今宮町、津守村、粉浜村とともに新たに設置された西成区の一部となりました。
交通
玉出町内には、かつて南海鉄道（現在の南海本線）、高野線（現在の南海高野線）、阪堺線（現在の阪堺電気軌道阪堺線）の三つの鉄道路線が通っていました。南海鉄道は町域を南北に縦断し、町内には岸ノ里駅と玉出駅が設置されていました。これらの駅は、現在の岸里玉出駅の前身にあたります。特に玉出駅は、当初南海鉄道に設置計画がなかったものの、勝間村が駅用地を寄付する形で1907年9月に開業しました。岸ノ里駅も、駅周辺の地主が建設費用を寄付することで1913年7月に設置されたものです。高野鉄道（後の南海鉄道高野線）は1900年9月に勝間駅を設けましたが、この駅は1903年2月に阿部野駅と改称され、さらに1925年3月には岸ノ里駅に統合されました。阪堺電気軌道（後の南海鉄道阪堺線）は町域の東部を南北に走り、宮ノ下駅と勝間駅が設置されていました。宮ノ下駅は1960年代までに廃止され、勝間駅は現在の東玉出停留場に相当します。
教育
町内には、三つの小学校と一つの幼稚園が設置されていました。小学校は、玉出第一尋常小学校（現在の大阪市立玉出小学校）、玉出第二尋常小学校（現在の大阪市立岸里小学校）、玉出第三尋常高等小学校（現在の大阪市立千本小学校）です。玉出小学校は特に歴史が古く、1873年2月15日に「第六大区第一区第三番小学校」として開校しました。これは西成郡内で最初に設置された小学校の一つとされています。その後の改編を経て、明治中期には玉出尋常高等小学校となりました。大正時代に児童数が急増したため、1913年に玉出第二尋常小学校、1920年に玉出第三尋常高等小学校が相次いで開校しました。第三校の開校時には、玉出小学校の高等科が第三校に移管され、玉出小学校は尋常科単独となり玉出第一尋常小学校と改称されました。また、町内で唯一の幼稚園として、1913年に私立開花幼稚園が開園しています。
その他
玉出町は、警察については今宮警察署（現在の西成警察署）、郵便については天下茶屋郵便局（現在の阿倍野郵便局）の管轄区域でした。また、町独自の消防組織として玉出町消防組が設置されていました。生根神社は、この地域のかつての氏神とされていました。
地理
玉出町は上町台地の西側に広がる低地に位置していました。町内では、生根神社付近を指す「玉出」などの小字が住民間で通称として使われていましたが、行政上の正式な地名は設定されておらず、全町域を一括して地番表示していました。しかし、大正期に宅地化が進み転入者が急増すると、町全域を単位とする番地表示は不便となり、新たな町名設定の計画が持ち上がりました。町域の実地調査に基づく新町名案が町議会で審議されましたが、実施は延期され、結果として1925年の大阪市への編入を迎えることとなりました。市編入後、旧町域は一時「西成区玉出町」とされ、1927年1月になって改めて町名の設定・改称が行われました。
歴史
玉出町の歴史は、その前身である勝間村に遡ります。勝間村という名称の由来には諸説あり、13世紀にこの地域を開発したとされる勝間大連（こつまおおむらじ）に因むという説や、「勝玉の里（かつたまのさと）」という古称が転訛（てんか）したという説などがあります。当初は住吉郡に属していましたが、1609年に西成郡に編入されました。江戸時代には「畑場八ヵ村」の一つとして知られる農村地帯であり、大坂市街地へ蔬菜（そさい）を供給するほか、勝間木綿（こつまもめん）と呼ばれる綿花栽培が盛んに行われていました。また、木津村から勝間村を経由して粉浜へ至る勝間街道が南北に走り、紀州街道のバイパスとしての役割も担っていました。村の東部にあった勝間新家は、後に天下茶屋と呼ばれるようになりました。天下茶屋の集落は18世紀末頃に勝間村から東成郡天王寺村に編入されたと伝えられていますが、当時すでに勝間村、今宮村、天王寺村の境界付近一帯を指す広域地名としても使われていたようです。明治時代初期には、隣接する津守新田と合同で村政を運営した時期もありました。1889年の町村制施行により、改めて勝間村が発足します。明治時代後半になると、大阪市街地の拡大に伴い、市に近接する地理的条件から農村から住宅地への転換が進み始めました。人口の急増に対応するため、勝間村は1915年11月1日に町制を施行し、玉出町と改称しました。「玉出」という名称は、勝間村内にあった小字の一つから採用されたものです。その後、玉出町は1925年4月1日に大阪市に編入され、廃止されました。旧町域は、同時に市へ編入された今宮町、津守村、粉浜村とともに新たに設置された西成区の一部となりました。
交通
玉出町内には、かつて南海鉄道（現在の南海本線）、高野線（現在の南海高野線）、阪堺線（現在の阪堺電気軌道阪堺線）の三つの鉄道路線が通っていました。南海鉄道は町域を南北に縦断し、町内には岸ノ里駅と玉出駅が設置されていました。これらの駅は、現在の岸里玉出駅の前身にあたります。特に玉出駅は、当初南海鉄道に設置計画がなかったものの、勝間村が駅用地を寄付する形で1907年9月に開業しました。岸ノ里駅も、駅周辺の地主が建設費用を寄付することで1913年7月に設置されたものです。高野鉄道（後の南海鉄道高野線）は1900年9月に勝間駅を設けましたが、この駅は1903年2月に阿部野駅と改称され、さらに1925年3月には岸ノ里駅に統合されました。阪堺電気軌道（後の南海鉄道阪堺線）は町域の東部を南北に走り、宮ノ下駅と勝間駅が設置されていました。宮ノ下駅は1960年代までに廃止され、勝間駅は現在の東玉出停留場に相当します。
教育
町内には、三つの小学校と一つの幼稚園が設置されていました。小学校は、玉出第一尋常小学校（現在の大阪市立玉出小学校）、玉出第二尋常小学校（現在の大阪市立岸里小学校）、玉出第三尋常高等小学校（現在の大阪市立千本小学校）です。玉出小学校は特に歴史が古く、1873年2月15日に「第六大区第一区第三番小学校」として開校しました。これは西成郡内で最初に設置された小学校の一つとされています。その後の改編を経て、明治中期には玉出尋常高等小学校となりました。大正時代に児童数が急増したため、1913年に玉出第二尋常小学校、1920年に玉出第三尋常高等小学校が相次いで開校しました。第三校の開校時には、玉出小学校の高等科が第三校に移管され、玉出小学校は尋常科単独となり玉出第一尋常小学校と改称されました。また、町内で唯一の幼稚園として、1913年に私立開花幼稚園が開園しています。
その他
玉出町は、警察については今宮警察署（現在の西成警察署）、郵便については天下茶屋郵便局（現在の阿倍野郵便局）の管轄区域でした。また、町独自の消防組織として玉出町消防組が設置されていました。生根神社は、この地域のかつての氏神とされていました。
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