王将 (1973年の映画)

映画『王将』詳細解説

1973年に公開された映画『王将』は、将棋に生涯を捧げた実在の人物、坂田三吉の半生を描いた作品です。北條秀司の同名戯曲を原作とし、過去にも映画化されていますが、本作は伊藤大輔監督が関わっていない唯一の作品となっています。監督は堀川弘通が務め、勝新太郎が坂田三吉、中村玉緒が妻の小春を演じています。

あらすじ

時は明治時代末期、大阪の天王寺に住む坂田三吉は、雪駄職人としての生計を立てながらも、その情熱のほとんどを将棋に注ぎ込んでいました。彼は「天王寺の三吉」として知られ、賭け将棋で名を馳せていましたが、そのために生活は困窮し、妻の小春は苦労が絶えません。眼病を患いながらも将棋への情熱は衰えず、ある日、新聞社主催の将棋大会に出場します。

決勝で、東京から招待されたプロ棋士の関根七段に敗れた三吉は、プロの将棋指しを目指すことを決意。しかし、生活はさらに困窮し、高利貸しからの借金で家財道具まで失いかけます。絶望した小春は娘の玉江と心中を図りますが、玉江の言葉に思いとどまります。そんな中、三吉は師匠につき、プロ棋士への道を歩み始めますが、その性格から指導を受けることを禁じられてしまいます。

眼病が悪化し、失明の危機に瀕した三吉ですが、眼科医の菊岡博士の尽力で手術を受け、視力を回復します。その後、三吉は実力をつけ、関根八段との間で名人位をかけた三番勝負に挑みます。激戦の末、二勝を挙げますが、その将棋は力任せであると娘の玉江に指摘されます。

後日、名人位をかけて関根と対局することになった三吉は、対局相手が雲隠れしていることを知ります。そこで、二人は別の場所で対局することになります。そこで、三吉はかつての長屋仲間と再会し、その妻が自分の妻と同じ病気で亡くなっていたことを知ります。三吉は対局で奇手を放ち勝利しますが、その将棋はハッタリだと自覚していました。そして、勝利したにもかかわらず、関根の方が名人にふさわしいと名乗りを上げませんでした。その後、妻の小春が亡くなったことを知り、彼女への愛を語り、映画は幕を閉じます。

見どころ

勝新太郎と中村玉緒の夫婦役: 実生活でも夫婦である二人の息の合った演技は、観る者の心を強く揺さぶります。特に、夫を支えながらも苦労を背負う妻の姿は、多くの観客の共感を呼びました。
将棋への情熱: 三吉の将棋に対する狂おしいほどの情熱が、観る者に熱い感動を与えます。勝負の世界の厳しさ、そして、その中で生きる人々の姿が克明に描かれています。
大阪の風景: 明治時代の大阪を舞台に、当時の街並みや人々の生活がリアルに再現されています。通天閣がそびえる天王寺の長屋を背景に、人間ドラマが繰り広げられます。
豪華キャスト: 勝新太郎、仲代達矢、中村玉緒という豪華キャストに加え、藤田まこと、永井智雄など、名優たちが脇を固め、作品に深みを与えています。

スタッフ

製作：藤本真澄、森岡道夫
監督：堀川弘通
原作：北條秀司
脚本：笠原良三
音楽：佐藤勝

キャスト

坂田三吉：勝新太郎
関根八段：仲代達矢
坂田小春：中村玉緒
坂田玉江：音無美紀子、古城門昌美（子供時代）
うどん屋・新吉：藤田まこと

まとめ

映画『王将』は、将棋に人生をかけた男の生き様を描いた感動的な作品です。夫婦愛、師弟愛、友情など、様々な人間関係が交錯し、観る者に深い感動を与えます。将棋に詳しくない方でも、十分に楽しめる作品です。ぜひ一度、ご覧になってみてください。

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