王尊

王尊の生涯

王 尊（おう そん、生没年不詳）は、前漢の官吏であり、字は子贛。彼は涿郡の高陽県出身で、職歴を通じて重要なポジションを担った人物です。王尊の壮絶な人生は、彼が若くして両親を亡くし、親戚に養われながら羊を飼って生活していたことから始まります。この困難な状況でも学問に励み、13歳の時にはすでに獄吏としての役割を果たしていました。

数年後、王尊は太守府での勤務を経て、その才能を評価され、さまざまな役職に就くようになりました。一度は病気を理由に辞職し、郡の文学官に学ぶことを選択して『書経』や『論語』の研究にいそしみました。しかし、運命に導かれるように再び職につき、幽州刺史の従事として活躍しました。その後、王尊は遼西の塩官長に任命され、初元年間には虢県の県令に推挙されました。

王尊の治世においては、彼の強い姿勢と評価が際立ちました。ある美陽県では、女性から「子が自分を妻としている」との訴えがありましたが、王尊は法律の観点からその問題に厳格に対処しました。彼はこの事案に関して「律に母を妻にした場合については書かれていない」とし、相手を木に磔にして騎士に射殺させるという過激な手段を選ぶこともありました。

その後、元帝の行幸の際に目に留まった王尊は安定太守となり、その職場においても汚職の根絶に努めました。彼は郡中の秩序を維持し、盗賊たちを他郡へ追い払うことでその名声を高めました。こうした成果にも関わらず、王尊は後にその残虐性が理由で罷免されることとなります。

復帰後には護羌将軍としての任務を受けましたが、羌族の反乱に直面しました。数万の羌に囲まれる中、彼は千の騎兵を率いて突撃しますが、戦功が天子に報告される前に業務を離れたことで再度罷免の憂き目にあったのです。

その後、涿郡の太守である徐明に推薦され、王尊は郿県の県令に任命され、さらに益州刺史に昇進しました。道中では、王吉が険しい山道を前に辞職を口にしましたが、王尊は「急ぎ行くのだ。私は忠臣である」と言い切りました。このエピソードが示す通り、王尊は常に忠誠を重んじ、結果的には益州の地で蛮夷が漢に従うようになりました。

次に王尊は東平相となりますが、ここでも難しい局面に直面します。東平王が法を無視する行動を取る中、王尊はしっかりとした態度で臨みました。これに対して王は彼を殺そうとしましたが、王尊はその目論見を見抜きます。最終的には不問となり、王尊は罷免されることになりました。

その後、一系列の職務を経て、大将軍王鳳によって軍中司馬に命じられ、さらに司隷校尉に抜擢されるという運命を辿ります。この時期には石顕の失脚を受け、彼の悪事について弾劾し、忠義心を示しましたが、これが王尊にとって不利に働き、再び左遷されることになりました。

京兆尹として働く際、彼は盗賊の問題に直面しますが、一カ月以内に盗賊が消える成果を上げ、名声は高まりました。河平2年には、皇帝の使者に対する無礼を理由に罷免されるも、民からは惜しまれる存在として称賛され、徐州刺史に任命されるなど、その政治的影響力は衰えませんでした。

黄河の大洪水に際して、王尊は自身の身をもってその治水を試み、災害を鎮めるという偉業を成し遂げました。この功績により彼には中二千石の地位と黄金が与えられました。

数年後、王尊は官に在職している時期に亡くなり、彼の子である王伯も京兆尹にまで昇進しましたが、父と比べて能力に乏しく、罷免される結果となりました。王尊の生涯は彼の忠誠心、強い意志、そして公正な政治への献身が色濃く表れていると言えるでしょう。

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