王弼 (明)

王弼（おう ひつ）：明朝建国を支えた双刀の勇将

王弼（おう ひつ）は、元末から明初の激動期に活躍した武将です。1332年に臨淮（現在の江蘇省盱眙県）で生まれ、その生涯を波乱に満ちた戦場の中で終えました。

若き日の決起

王弼の祖先は定遠に住んでいましたが、後に臨淮に移り住みました。彼は若い頃から双刀の使い手として名を馳せ、「双刀王」と異名をとるほどの武術の達人でした。元末の混乱期には、自衛のため三台山に篭り、自ら軍を組織しました。

朱元璋への帰順と武功

1356年、王弼は朱元璋の軍門に下り、その才能を認められ宿衛の守りに就きました。ここから彼の数々の武功が始まります。張士誠軍との戦いでは、湖州、池州、石埭を攻略。婺源では守将の鉄木児不花を討ち取り、3千の捕虜を得るなどの戦果を挙げ、元帥に昇進しました。その後も、蘭渓、金華、諸曁を攻略し、池州の救援や太平の回復にも貢献しました。

鄱陽湖の戦いと平江の戦い

1363年には、鄱陽湖の戦いに参加し、陳友諒軍を破るという大功を挙げました。さらに、武昌攻略、廬州攻略、安豊攻略、襄陽・安陸攻略など、転戦を重ね、淮東、旧館を攻略し、張士誠の将、朱暹を降して湖州を再び攻略しました。驍騎右衛親軍指揮使に進み、平江の戦いでは、常遇春軍が苦戦する中、双刀を振るい敵を圧倒し、戦局を打開しました。彼の奮戦により、常遇春軍は勢いを盛り返し、張士誠軍を大破するに至りました。この戦いでの活躍は、彼の武勇を後世に語り継がせるものとなりました。

明朝建国と北伐

1368年、明朝が建国されると、王弼は北伐に参加し、山東、河南、河北を攻略。元の首都である大都を攻略するなどの戦果を挙げました。さらに山西を攻略し、ココ・テムルを敗走させ、陝西を攻略するなど、明朝の勢力拡大に大きく貢献しました。

辺境での戦い

1378年、沐英に従ってトルファンに遠征し、多くの敵兵を討ち、捕らえました。この功績により、定遠侯に封ぜられ、食禄2千石を賜りました。1381年には、傅友徳に従って雲南に遠征し、大理の龍尾関を攻略。鶴慶、麗江など諸郡を平定し、5百石を加増されました。その後も、曹震と共に威楚路を降すなど、辺境での戦いにも尽力しました。

ナガチュ討伐とブイル湖の戦い

1387年、副将軍として馮勝の北伐軍に従い、ナガチュを降伏させました。1388年には、藍玉の北伐軍に従い、ブイル湖（捕魚児海）での戦いで先鋒を務め、大勝に貢献しました。藍玉が撤退を考えた際に、王弼は「10万余の軍勢を率いて漠北深く侵入したのに、成果なく撤退するのは使命に反する」と諫め、藍玉を思いとどまらせました。この進言がなければ、明軍は大きな戦果を逃していたかもしれません。彼の決断力と勇猛さが、明軍を勝利に導いたのです。この戦いで、北元の太尉である蛮子を討ち取り、多くの敵兵が降伏しました。

晩年と死

1389年、王弼は山西、河南、陝西で練兵を行いました。1390年に郷里に帰還しましたが、1391年には再び傅友徳に従い、副将として北平の守備にあたりました。その後、1392年には再び山西、河南で練兵を行い、1393年には応天府に召還されました。しかし、1394年に賜死を命じられ、その生涯を終えました。彼の死とともに、爵位も除かれました。

まとめ

王弼は、元末から明初にかけて活躍した武将であり、明朝建国の大功臣の一人です。双刀を自在に操る武術の達人であり、数々の戦でその勇猛さを示しました。鄱陽湖の戦いや平江の戦いでの活躍は特に有名で、その後の北伐や辺境での戦いでも重要な役割を果たしました。彼の生涯は、激動の時代を生き抜いた一人の武人の物語であり、その武勇と功績は後世に語り継がれています。

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