馮勝

馮勝（ふう しょう）

馮勝は、明朝の創設に大きく貢献した武将であり、その功績は明史にも記されています。彼は、兄の馮国用と共に朱元璋に仕え、数々の戦でその軍事的な才能を発揮しました。しかし、晩年には朱元璋の猜疑心により悲劇的な最期を迎えることになります。

生い立ちと朱元璋との出会い

馮勝は、定遠（現在の安徽省滁州市定遠県）の出身で、元の名を国勝、またの名を宗異といいます。生まれた時には産室に黒気が満ちていたという逸話が残されています。彼は若い頃から勇敢で知略に富み、読書家でもあった兄の馮国用と共に兵法を学び、元末の動乱期には武装集団を組織していました。朱元璋が妙山を通った際、馮勝兄弟は彼の配下となり、その才能は朱元璋に認められます。特に、兄の馮国用は、金陵（現在の南京市）を重要拠点とする戦略を提案し、朱元璋に重用されました。

集慶攻略と兄の死

至正15年（1355年）、朱元璋軍は長江南岸を制圧し、馮国用は親衛隊長に任命されました。彼は、投降してきた元軍の武将、陳埜先の裏切りを見抜き、これを討ち取るという功績を立てています。その後、陳埜先の反乱を鎮圧する中で、馮国用は捕虜たちの動揺を鎮めるために、朱元璋と共に彼らの中に寝るという奇策も実行しました。集慶占領後、馮国用は親軍都指揮使に抜擢されますが、その直後に36歳という若さで亡くなります。朱元璋は彼の死を深く悲しみ、後に功臣として称えました。

馮勝、兄の遺志を継ぐ

兄の死後、馮勝は親軍の地位を引き継ぎ、朱元璋の信頼を得て軍事的な要職を歴任しました。至正20年（1360年）には、西の軍閥である陳友諒が応天府を攻撃した際、馮勝は中堅として活躍し、采石や太平の奪還に貢献しました。また、鄱陽湖の戦いにも従軍し、江西の諸都市を攻略する上で重要な役割を果たしました。

張士誠との戦い

陳友諒を倒した後、朱元璋は東の宿敵である張士誠との戦いを開始します。この戦いの中で、馮勝は高郵攻略の際に敵の策略にはまり、数百人の部下を失うという失態を犯してしまいます。激怒した朱元璋は彼を杖打ちの刑に処しますが、その後、馮勝は死に物狂いで奮戦し、淮安や安豊を落とし、敵将の呂珍を捕虜にしました。さらに、常遇春の配下として平章攻略にも参加しています。

北征と陝西・甘粛攻略

洪武元年（1368年）、朱元璋は明を建国し、馮勝は太子右詹事を兼任しました。その後、徐達の配下として北征に参加し、汴梁、洛陽、陝州などの重要都市を攻略しました。帰還後、馮勝は征虜右副将軍に任命され、汴梁の守備を任されます。彼は、陝西攻略や甘粛攻略においても重要な役割を果たし、数々の戦で勝利を収めました。特に、定西の戦いでは、ココ・テムルを破るという大きな戦功を立て、開国輔運推誠宣力武臣・栄禄大夫・右柱国・参軍国事・宋国公に任じられ、生涯にわたり食禄三千石を支給されることが約束されました。

満洲攻略

北元との戦いが一段落した後、馮勝は満洲の攻略に乗り出します。洪武20年（1387年）、彼は征虜大将軍に任命され、傅友徳や藍玉を副将軍として、女直（満洲）を支配していた納哈出を討伐します。馮勝は、松亭関から出撃し、大寧、寛河、会州、富峪の四城を降伏させました。納哈出は降伏しますが、その後の交渉で藍玉が不遜な態度を取ったことや、馮勝自身の不祥事が発覚し、朱元璋の怒りを買います。馮勝は大将軍を解任され、数々の手柄も取り消されることとなりました。

晩年と悲劇的な最期

晩年、馮勝は曲靖の反乱を鎮圧し、太原や平陽の募軍、立衛屯田を任されるなど、一定の評価を得ていました。功臣として第3位に列せられましたが、朱元璋の猜疑心は次第に増大し、馮勝もその標的となります。洪武26年（1393年）には藍玉が粛清され、その2年後には馮勝も罪に問われ処刑されます。その理由については明史にも詳しく記述されておらず、謎に包まれています。馮勝の死は、明朝初期の権力闘争の激しさを物語るものであり、功臣たちの悲劇的な末路を象徴する出来事でした。

馮勝の兄である馮国用の子、馮誠は、雲南での戦功により右軍左都督にまで昇進しています。

馮勝の生涯は、明朝初期の歴史を語る上で欠かせない人物の一人であり、彼の軍事的な才能と悲劇的な最期は、今もなお多くの人々の関心を集めています。

もう一度検索