曹震

曹震（そう しん、生年不詳 - 1393年）は、元末から明初の時代に活躍した軍人です。彼の生涯は、明朝の創始者である朱元璋の勃興と深く結びついています。本貫は濠州であり、その出自は明らかではありませんが、朱元璋が挙兵した際にその麾下に参加し、軍人としてのキャリアをスタートさせました。

初期の段階では、指揮使として各地を転戦し、その軍事的才能を発揮しました。特に、洪武12年（1379年）には、西番討伐の功績が認められ、景川侯の爵位を授与されました。これは、彼の功績が朝廷からも高く評価されていたことを示しています。

その後、曹震は軍事だけでなく、屯田政策にも関与するようになります。洪武13年（1380年）には、楊璟や薛顕らとともに北平で屯田に従事しました。また、洪武14年（1381年）には、藍玉に従って雲南征討に参加し、臨安諸路を制圧するなど、明朝の版図拡大に貢献しました。さらに、洪武15年（1382年）には、威楚に到達し、元の平章である閻乃馬歹らを降伏させました。これらの活躍から、曹震が武将として卓越した能力を持っていたことが伺えます。

曹震の活動は、単なる武力行使に留まりませんでした。洪武17年（1384年）には、容美・散毛の諸洞の少数民族や西番の朶甘・思曩日の諸族の討伐を願い出ましたが、これは朱元璋によって却下されました。一方で、彼は貴州・四川の二都司の番馬を陝西・河南の将士に分給することを請願し、さらに四川から建昌駅に至る道路について、風土病が蔓延している大渡河経由ではなく、峨眉からの古駅道を利用することを提言しました。これらの提案は、いずれも朱元璋に受け入れられ、彼の合理的な判断力と、民の生活を考慮する姿勢が窺えます。

洪武20年（1387年）には、曹震は四川都司の選抜した精兵25000人を率いて雲南品甸で屯田を行い、洪武21年（1388年）には、靖寧侯葉昇とともに東川の少数民族の反乱を鎮圧しました。この際、5000人以上を捕獲するなどの戦果を挙げました。その後、四川の軍務を任されると、藍玉とともに征南軍士の考査を行いました。

曹震は、交通インフラの整備にも大きな貢献を果たしました。洪武23年（1390年）、永寧宣慰司が管轄する河道の浅瀬が通行を困難にしているという訴えを受け、曹震は洪武帝の命を受けて、支河を永寧に通し、これを広く深く開削することで水運を可能にしました。また、陸路には駅舎や郵亭を作り、橋を架け、棧道を立てるなど、大規模なインフラ整備を行いました。これらの整備によって、茂州から松潘、茂州から貴州を経由して保寧に至る道が開通し、松潘は重要な拠点となりました。曹震は洪武帝に四事の上奏を行い、全て許可されたと記録されています。

しかし、曹震の輝かしいキャリアは、洪武26年（1393年）に突如として終わりを迎えます。藍玉の獄が勃発すると、曹震は朱寿とともに指揮の荘成らを誘って反乱を計画したとされ、逆党の首魁としてその子の曹炳とともに処刑されてしまいました。彼の死は、明朝初期の政治的な混乱を象徴する出来事の一つとして、歴史に刻まれています。曹震の生涯は、武将としての才能、行政能力、そして時代の波に翻弄された悲劇的な側面を併せ持っています。

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