王禎

王禎（生没年不詳）は、元代に活躍した農学者であり、字を伯善と称しました。彼は東平府須城県（現在の山東省）の出身で、農業技術に関する深い知識と実践的な技能を持っていました。

王禎は、自ら農具を設計・製作し、その普及に努めました。彼の功績の中でも特に重要なのは、中国全土の農業技術を網羅した総合的な農業技術書を初めて編纂したことです。これにより、彼は中国農業史における重要な人物として位置づけられています。

官吏としての経歴も持ち、旌徳県令や永豊県令といった地方官を歴任し、各地で優れた治績を挙げました。彼の行政手腕は、農業技術の知識と相まって、地域社会の発展に大きく貢献しました。

王禎の代表的な著作である『農書』は、皇慶2年（1313年）に刊行されました。全22巻（または36巻とも）から構成されるこの書物は、同時代に至るまでの過去の農業技術を集大成したものです。農作業、栽培法、農具に関する詳細な記録が、273幅もの図録とともに紹介されています。

『農書』は、単なる農業技術の解説書にとどまらず、当時の社会や文化、経済状況を反映した貴重な資料としても評価されています。特に、農具の図録は、当時の農具の形状や使用方法を知る上で欠かせない情報源となっています。

王禎はまた、印刷技術にも関心を持っていました。『農書』の中で、彼は木活字を使用して自らの著書を印刷したことを述べています。さらに、『農書』の中で特に注目されるのは、活字を配列するための回転活字台に言及していることです。この回転活字台は、活字の配置作業を効率化するための画期的な発明であり、印刷技術の発展に貢献しました。

王禎の『農書』は、農業技術の発展に貢献しただけでなく、印刷技術の歴史においても重要な位置を占めています。彼の功績は、後世の農業技術者や研究者に大きな影響を与え、中国の農業発展に大きく貢献しました。

参考文献

* 『王禎』 - コトバンク

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