王紘

王 紘について

王紘（おう こう、生没年不詳）は、東魏から北斉の時代に活躍した軍人であり、字は師羅です。彼の出身地は太安郡の狄那県にあたります。彼の経歴や人物像を通じて、その時代の社会状況や政治の流れを垣間見ることができます。

経歴

王紘は、王基の子供としてこの世に生を受けました。彼は若い頃に小部の酋帥となり、後に興和年間に高澄に召されて庫直に任命され、奉朝請という地位も得ました。その後、高澄が暗殺された際に、王紘はその危機において白刃を操り反乱者に立ち向かい、その忠誠心が評価されて平春県男の爵位を手にしました。また、晋陽県令にも任じられました。

天保元年（550年）には北斉が建国され、王紘は寧遠将軍の称号を得て文宣帝の信任を受けます。乾明元年（560年）には常山王高演が丞相に就任すると、王紘は中外府功曹参軍事に任命され、皇建元年には義陽県子に昇進しました。

河清3年（564年）には、他の将軍たちと共に突厥に対して攻撃を仕掛け、驃騎大将軍の位を手にしました。さらに、天統元年（565年）には給事黄門侍郎に任じられ、射声校尉の地位も獲得しました。武平元年（570年）には開府儀同三司に昇進し、軍の精鋭を選抜して要地への派遣を上奏しました。

武平4年（573年）、南朝陳が淮南に攻撃を仕掛けてきた際には、王紘は戦争ではなく和睦を主張しました。彼の考えは多くの官人に支持され、結果的に国力の回復を図ることとなったと伝えられています。その後、侍中の職を兼任し北周への使者に赴きましたが、帰国後に亡くなりました。彼は「鑑誡」という書を24篇残したとも言われます。

人物・逸話

王紘は若い頃から弓術と乗馬を愛し、騎射に優れた才能を持っていました。また、文学にも情熱を持ち続けました。13歳の時、揚州刺史の郭元貞に出会い、彼との会話は有名な逸話となっています。郭元貞は王紘に「何の書を読んでいるのか？」と尋ねた際、王紘は「『孝経』を読んでいる」と答え、続けてその内容についても的確に説明しました。この知恵に感銘を受けた郭元貞は、王紘を高く評価しました。

また、15歳の時には北豫州に滞在中、衣服の襟の着方について論じる場面もありました。王紘は「国家の龍が朔野を飛び中原を歩むのに、衣の襟の左右などで争うことがどれほど重要か」と発言し、彼の鋭い考察力を示しました。

文宣帝とのやり取りも注目に値します。酒宴の際に王紘は「大苦とは何か」との問いに、長夜に酒を飲みすぎて国が滅びてしまう危険を示唆する形で返答したため、帝は動揺しました。また、王紘は臣下としての正直さを貫き、反乱者の動向に警戒心を持つことが重要である旨を伝えたことも記録されています。文宣帝に対する直言が元で一時は命の危機に陥ったものの、最終的には釈放されました。

王紘の生涯は、勇敢さや知恵、忠義に満ちたものであり、その数々の逸話は彼の人柄を浮き彫りにしています。彼の考えや信念は、今なお後世に語り継がれており、歴史的人物としての評価を受けています。

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