現代の音楽 (NHK)

現代の音楽とは

NHK-FMの長寿番組である『現代の音楽』は、1957年の放送開始以来、日本国内で唯一となる現代音楽を専門に扱うラジオ番組として親しまれています。半世紀以上にわたり、時代の先端を行く音楽作品やその背景にある思想を紹介し、日本の現代音楽シーンを牽引する重要な役割を果たしてきました。

番組の歩み

番組の起源は戦後間もない1946年に遡り、その流れを汲む形で1957年に『現代の音楽』としてラジオ第2放送で始まりました。その後、FM放送へと移り、現在に至ります。放送時間帯は時代によって変遷しており、かつては週末の深夜に放送され、一日の放送を締めくくる番組であった時期もあります。2007年11月25日には、放送開始50周年を記念し、日本の現代音楽作曲家の歴史を振り返る4時間50分の特別番組が放送されました。

放送内容と特徴

『現代の音楽』で紹介される内容は、時代と共に多様な広がりを見せてきました。初期には前衛の古典やすでに歴史上の大家と見なされる日本の作曲家の作品が多く取り上げられ、近年でもその傾向は続いています。かつては、現音作曲新人賞の本選会の模様や、国内外の新しいディスクの紹介、さらにはロシアやインドネシアといった特定の国の作曲家に焦点を当てる特集なども組まれていました。現在の放送では、日本の現代音楽のライヴ演奏から選曲されることが主となっています。また、2016年頃からは作曲家自身をスタジオに招き、インタビューを行った後にその作品を放送するという形式も行われています。

番組の重要な特徴の一つは、武満徹作曲賞の最終審査に残った作品が全てノーカットで放送されるという局の方針です。これにより、次世代を担う作曲家たちの瑞々しい才能を知る貴重な機会を提供しています。現在の放送時間は50分で、実際に音楽が流れる時間は40分程度に制作されることが多いようです。ただし、過去には国際ロストラム・オブ・コンポーザーズの音源を全て放送していた時期もありましたが、現在は行われていません。

番組を支える解説者たち

番組の「顔」とも言える解説者は、長年にわたり日本の音楽界を代表する識者や作曲家が務めてきました。柴田南雄氏、上浪渡氏、近藤譲氏、白石美雪氏、西村朗氏、猿谷紀郎氏らが歴代の担当として名を連ねています。1990年代半ば頃から白石美雪氏が解説を務めた後、西村朗氏との共同担当を経て、西村氏、猿谷紀郎氏と引き継がれました。2015年4月からは再び西村朗氏が解説を担当していましたが、2023年9月での番組降板が発表されました。しかし、その発表直後の9月7日に西村氏が逝去されるという悲しい出来事がありました。これを受け、番組では白石美雪氏と沼野雄司氏による2週にわたる追悼放送が行われ、2023年10月より白石美雪氏が再び解説を単独で担当することとなりました。また、2022年5月からは作曲家の川島素晴氏が、月に5回放送がある最終週に「川島素晴のここが楽しい！現代音楽」というコーナーを担当しています。

番組を彩る要素

『現代の音楽』では、時代によって様々な楽曲がテーマ曲として使用されてきました。バッハ＝ウェーベルンの「6声のリチェルカーレ」に始まり、助川敏弥による電子音楽、ケヴィン・ヴォランズの弦楽四重奏曲「ホワイトマン・スリープス」の一部、ロバート・モーランの「薔薇の砂漠」、トーマス・アデスの作品など多様な楽曲が番組の冒頭を飾ってきました。2023年現在はスティーヴ・ライヒの「Runner: I. Sixteenths」が使用されています。また、2017年度からは、若手作曲家を対象にオーケストラ作品を新たに委嘱する「新作委嘱」シリーズも開始され、日本の新しい才能の発掘・紹介にも力を入れています。NHK-FMでは本番組の他にも、年に2回程度「海外現代音楽特集」という関連番組も放送されています。

長年の歴史の中で、解説者や放送内容は変化しながらも、『現代の音楽』は日本の現代音楽シーンの重要な記録者、そして発信者としての役割を果たし続けています。

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