琴椿克之

琴椿克之：沖縄から大相撲へ挑んだ力士の軌跡

琴椿克之（ことつばき かつゆき）は、1960年12月6日、沖縄県那覇市に生まれました。元大相撲力士で、最高位は西前頭3枚目です。佐渡ヶ嶽部屋に所属し、現役時代は稽古熱心さで知られていました。得意技は右四つ、寄り、上手投げ。現在は年寄・白玉として後進の指導に当たっています。

沖縄からの挑戦：類まれな経歴

沖縄返還直後の1976年3月場所、琴椿は佐渡ヶ嶽親方（元横綱・琴櫻）にスカウトされ、大相撲の世界へ飛び込みました。当時、沖縄返還前に大相撲に入門した力士はごくわずかで、関取に昇進した者はさらに少なかったため、琴椿の入門は異例中の異例と言えるでしょう。

努力と苦悩：幕下時代と十両への道

入門後、琴椿は幕下で長く苦戦を強いられました。10年近くもの歳月をかけて1985年11月場所、ようやく十両に昇進を果たしますが、その場所は5勝10敗と大きく負け越し、幕下に陥落。引退も考えましたが、師匠の「気楽にいけ」という激励を受け、再起を誓いました。

1989年9月場所、十両に復帰すると、以後十両に定着。地道な努力が実り、1991年1月場所、念願の幕内入りを果たしました。

幕内での活躍と惜しまれる引退

幕内では怪我に悩まされながらも、右四つからの豪快な投げ技で観客を魅了しました。最高位は1992年7月場所の西前頭3枚目。この場所は10日目から途中休場しましたが、4日目には大関・霧島を破る金星を獲得しています。同年11月場所では、幕尻ながら優勝争いに絡む活躍を見せましたが、若花田（後の若乃花）との取組で負傷し、休場を余儀なくされました。

その後、幕内から遠ざかり、1995年1月場所には幕下まで陥落。十両復帰を目指して土俵に上がりましたが、願いは叶わず、同3月場所後に引退を表明しました。年寄・白玉を襲名し、後進の指導に当たっています。

年寄名跡の変遷と現在

引退後、琴椿は年寄・白玉を襲名しましたが、琴ノ若の引退危機を機に一時的に年寄・山分へ名跡を変更。その後、師匠の定年退職まで現役で取れる見込みが立ったため、再び年寄・白玉に戻りました。この過程で、白玉の名跡を巡る珍しい経緯を経ることとなりました。現在は部屋付き親方として、後進の育成に尽力しています。

エピソード：故郷への思いと師弟の絆

1992年11月場所後、負傷のため沖縄巡業を欠場した琴椿。同期力士たちの「沖縄巡業に琴椿を参加させたい」という温かい運動を断ったエピソードは、彼の故郷への思いと人情味あふれる一面を物語っています。

また、十両から幕下に陥落した頃、引退を決意し特注の背広まで用意していた琴椿でしたが、師匠の言葉で現役続行を決意。そして、引退後にその背広を着用したというエピソードは、師匠と弟子との強い絆を感じさせます。

まとめ

琴椿克之の生涯は、沖縄という土地柄、類まれな境遇、そして努力と挫折、師弟の絆など、多くの要素が絡み合ったドラマです。彼の生き様は、大相撲という世界を愛し、その発展に貢献しようとする多くの関係者にとって、大きな励みとなるでしょう。

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