瑞星 (エンジン)

瑞星（ずいせい）

瑞星は、第二次世界大戦の時期に三菱重工業によって開発された航空機用の空冷複列星型エンジンです。社内ではA14という名称で呼ばれ、これは空冷（AIR COOLING）の略称でもあります。このエンジンは日本海軍に採用され、様々な海軍機の主力エンジンとして広く使用されました。さらに、陸軍にも同系統のハ26（瑞星10型相当）やハ102（瑞星20型相当）として採用され、陸軍機にも搭載された歴史があります。大戦後期には陸海軍共通の名称としてハ31が使われ、このエンジンは使いやすい設計が評価され、合計で12,795台が生産されました。

開発の背景

瑞星は、三菱が開発した金星エンジンのノウハウを活かして作られました。金星の実用化に成功した三菱は、そのプロジェクトで得られた技術をもとに、瑞星という小型航空機用エンジンの開発を行いました。また、大型航空機用エンジンである火星も同時に企画されています。瑞星の設計にあたっては、技術の流用や共通部品の使用が重要視され、金星との互換性が高められました。この方針により、開発期間が短縮され、信頼性の向上と量産の効率化が図られたのです。

設計と特徴

瑞星11型は1936年の初頭に計画が始まり、同年7月には第一号機が完成しました。量産は1938年からスタートし、当初は小型で前方視界の良い航空機を意識して設計されました。実際、試作機では瑞星が選ばれましたが、3号機以降は海軍の要求により中島の「栄」エンジンに換装され、結局は「栄」が制式採用されました。この選択は後に設計主務者である堀越二郎技師に後悔をもたらし、彼は当初「金星」を選ばなかったことを悔いたと言われています。

主要な性能

瑞星の主要な諸元は以下の通りです。

瑞星11型

• - タイプ: 空冷複列星型14気筒
• - 筒径/行程: 140mm/130mm
• - 排気量: 28.02L
• - 乾燥重量: 542 kg
• - 過給機: 遠心式スーパーチャージャー1段1速
• - 離昇馬力: 850HP/2,540RPM
• - 公称馬力: 925HP/2,450RPM（高度1,800m）

瑞星15型（ハ26-II）

• - 離昇馬力: 940HP/2,650RPM
• - 公称馬力: 995HP/2,600RPM（高度2,300m）

瑞星21型（ハ102）

• - 乾燥重量: 565 kg
• - 過給機: 遠心式スーパーチャージャー1段2速
• - 離昇馬力: 1,080HP/2,700RPM/ブースト+270mmHg
• - 公称馬力: 一速全開 1,055HP/2,600RPM（高度2,800m）
• - **二速全開 950HP/2,600RPM（高度5,800m）

主な搭載機

瑞星は次のような航空機に搭載されました。

• - 九四式二号水上偵察機
• - 九七式司令部偵察機二型
• - 十二試艦上戦闘機
• - 零式観測機
• - 九九式襲撃機
• - 一〇〇式司令部偵察機一型/二型
• - 二式複戦「屠龍」

このように、瑞星は日本の航空機史において非常に重要な役割を果たしており、当時の技術の粋を集めたエンジンであったことが分かります。

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