瑤泉院

瑤泉院：赤穂事件を彩る女性の生涯

瑤泉院（ようぜんいん）は、江戸時代中期に生きた女性であり、赤穂事件で知られる赤穂藩主・浅野長矩の正室として歴史に名を残しています。名は阿久里（あぐり）、または阿久理・阿久利とも記されています。夫の死後、落飾して瑤泉院と名乗るようになりました。「ようぜいいん」と誤読されることもありますが、正しい読み方は「ようぜんいん」です。

波乱に満ちた生涯

瑤泉院は、備後国三次藩初代藩主・浅野長治の三女として生まれました。父の後を継いだ浅野長照の養女となり、幼少期は尚姫、栗姫と名乗ったのち阿久里姫と改名しました。三次藩士の落合勝信が養育係として付き従っていました。

延宝5年（1677年）、赤穂藩主・浅野長矩との婚約が成立し、翌年には長矩の屋敷に移り住みました。天和3年（1683年）に正式に結婚しましたが、子供には恵まれませんでした。元禄8年（1696年）には、長矩の弟・浅野長広を養子として迎えています。

元禄14年（1701年）、長矩が吉良義央に刃傷に及んだことで、殿中刃傷事件は幕を閉じ、長矩は切腹、赤穂藩は改易となりました。瑤泉院は、実家である三次浅野家下屋敷に身を寄せ、落飾して寿昌院と名乗りましたが、のちに瑤泉院と改めました。

長矩の死後、瑤泉院は持参金の一部を赤穂の浜方に貸し付けていましたが、多くの借り主が元金を踏み倒しました。残った資金を、大石良雄らに託して討ち入り資金として提供したと伝えられています。しかし、討ち入り後の義士の葬儀や供養には参列していません。

晩年は日蓮宗に改宗し、四谷鮫河橋の妙行寺に参拝するなど、宗教に深く関わっていました。正徳4年（1714年）、41歳で亡くなり、夫と同じ泉岳寺に葬られました。

史実と創作の相違

多くの講談や歌舞伎作品では、「南部坂雪の別れ」として、討ち入り直前に大石良雄が瑤泉院と別れの会見をしたというシーンが描かれていますが、これは創作です。史実では、大石が瑤泉院に会ったのは討ち入りのかなり前であり、持参金の収支報告を行っています。

また、赤穂浪士の遺児の赦免運動に瑤泉院が尽力したという話も、史料では裏付けられていません。

創作作品では、瑤泉院の性格は時に厳しく描かれ、長矩の位牌で長広を叱責する場面などが見られます。これは、史実とは異なる部分です。

瑤泉院の生年と母について

瑤泉院の生年については複数の説があり、延宝2年（1674年）説が一般的ですが、寛文9年（1669年）とする説もあります。母親については、浅野長重の娘という俗説がありますが、年齢的に無理があり、長治の側室であるお石の方とする説が有力です。

瑤泉院が登場する作品

瑤泉院は、数多くの映画やドラマ作品で取り上げられ、多くの女優が演じてきました。作品によって、その人物像や役割は異なっており、史実と創作の間にある解釈の多様性を示しています。

まとめ

瑤泉院は、赤穂事件という歴史的大事件の渦中に生きた女性の象徴として、現在も人々の記憶に残っています。史実と創作が織りなす彼女の生涯は、様々な解釈と想像力を呼び起こし続けるでしょう。

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