璽光尊事件

璽光尊事件の真相：新宗教団体を揺るがした騒動の全貌

1947年（昭和22年）1月21日、石川県金沢市で発生した璽光尊事件は、新宗教団体「璽宇」とその主宰者である璽光尊（長岡良子）を巡る騒動でした。戦後の混乱期、璽宇の特異な活動は社会の耳目を集め、著名人の入信も相まって全国的な話題となりました。

事件の背景：新宗教「璽宇」とは何だったのか

璽宇は、太平洋戦争中に創立された新宗教団体です。教団は、連合国軍最高司令部によって掲揚が禁じられていた日章旗を掲げたり、天変地異を喧伝するなど、奇異な言動で注目を集めました。さらに、元横綱・双葉山定次や囲碁棋士・呉清源といった著名人が信者であったことも、教団の知名度を高める要因となりました。

事件の発端：警察の捜査と強制捜査

石川県警察部は、璽宇が人々の不安を煽り、統制物資である米を大量に所持していたことから、食糧管理法違反の疑いで璽光尊に出頭を求めました。しかし、璽光尊は出頭を拒否し、代わりに幹部が出頭しました。その後、璽光尊が夜行列車で逃亡を図っていることが判明したため、警察は本拠地を急襲し、信者らの抵抗を受けながらも、璽光尊や双葉山ら8人を公務執行妨害で逮捕しました。

事件の結末：璽光尊の釈放と事件の真相

逮捕後、璽光尊は精神鑑定を受け、「誇大妄想性痴呆症」と診断され、まもなく釈放されました。食糧管理法違反についても「違法性なし」と判断され、不起訴となりました。大捕物にも関わらず、軽い処分で済んだ背景には、有名人である双葉山や呉清源を「邪教」から救出する意図があったとも言われています。しかし、この事件は、戦前の国民的英雄であった双葉山に失望した人々も多く生み出しました。

事件が残した影響：その後の双葉山と社会への波紋

双葉山は、後に日本相撲協会の理事長に上り詰めましたが、璽光尊事件での逮捕歴が負い目となり、角界拳銃密輸事件の際に、事件に関わった力士や親方を強く叱責できなかったとされています。また、連続強姦殺人犯である大久保清は、この事件について「双葉山は馬鹿なんだ」と発言したと伝えられています。

考察

璽光尊事件は、戦後の社会不安を背景に、新宗教団体が社会に与える影響や、有名人の信仰が社会に及ぼす影響について考えさせられる事件です。また、事件の背後には、警察やメディアによる「邪教」からの救出という意図があった可能性も指摘されており、事件の真相は複雑に絡み合っています。

まとめ

璽光尊事件は、新宗教団体「璽宇」を巡る騒動であり、教団の特異な活動や著名人の入信が社会の注目を集めました。事件は、戦後の社会状況や人々の心理、そして宗教と社会の関係について、多くの示唆を与えています。

参考文献
石川県警察史編さん委員会『石川県警察史 下巻』
出口栄二他『新宗教の世界 4』 ISBN 480435204X

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