瓷器

瓷器（しき/じき）について

瓷器とは、奈良時代や平安時代の文献において、釉薬を施した陶器を指す用語です。この「施釉陶器」として知られる瓷器は、特に「緑釉陶器」や「灰釉陶器」などがその代表とされ、当時の技術や美的感覚を反映しています。

瓷器の歴史的背景

『和名類聚抄』という文献の器皿部や瓦器の条に記載があり、ここでは瓷器を「之乃宇豆波毛乃（しのうつわもの）」と称されています。また、唐代の文献である『一切経音義』では釉薬をかけた陶器に関連する説明がなされており、これにより瓷器の定義が確認できます。平安時代の記録には、「青瓷（あおし）」および「白瓷（しらし）」という言葉が存在しており、これが当時の瓷器の色合いや種類に関連していることがわかります。

特に、奈良時代から平安時代にかけて、尾張地方（現在の愛知県）において、三名の陶工に瓷器の制作技術を教えたという記録も存在します。これにより、地域における技術の伝承があったことが窺えます。

瓷器の考古学的証拠

考古資料としては、愛知県猿投窯で製作されたアンティークの施釉陶器である「緑釉陶器」と「灰釉陶器」が挙げられます。これらは、青瓷と白瓷の実態を示しており、それぞれが異なる釉薬の種類を持っていることが分かっています。特に、青瓷は緑釉陶器を、白瓷は灰釉陶器を示すと考えられ、両者を総称して「瓷器」として分類されていたことが想像されます。

また、静岡県浜松市の伊場遺跡からは「志器」と墨書された10世紀代の灰釉陶器が発見されています。これにより、瓷器の存在が歴史的にどのように位置付けられていたのか、具体的な証拠を持って理解することができます。

瓷器に対する考え方の変遷

ただし、白瓷に関しては灰釉陶器だけでなく、白灰色の無釉陶器も含むことがあるという見解もあります。これは、時代や地域によって釉薬の使い方や種類が変わることが影響しているためです。また、青瓷には緑釉陶器だけでなく、鉛釉陶器全般を指す一種の呼称ともなる場合もあります。

まとめ

瓷器は、奈良・平安時代の日本における陶芸の重要な部分を形成しており、釉薬の使い方を通じて、当時の人々の生活や美術観を伝える貴重な資源です。歴史的な資料や考古学的な発見をもとに、今後も更なる研究が期待されています。陶磁器としての瓷器の理解は、文化や技術の進化を知るための重要な手掛かりとなるでしょう。

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