緑釉陶器

緑釉陶器について

緑釉陶器（りょくゆうとうき）は、中国からの影響を受け、平安時代に日本で生産された施釉陶器の一種です。この陶器は主に鉛釉を使用しており、灰釉陶器と共に日本における初期の人工的に施釉された陶器として重要視されています。特に平安時代当時は、このような施釉陶器全般を「瓷器（しき）」、そして緑釉陶器を「青瓷（あおし）」と呼ぶことが多かったようです。

はじめに

施釉陶器の生産技術は、古墳時代に朝鮮半島から持ち込まれた須恵器の影響を受けて始まりました。古墳時代の須恵器には、焼成中に木材の燃焼によって偶然に釉が付着した「自然釉」と呼ばれるものが存在しましたが、これは人為的に釉を施したものではありません。その後、中国では戦国時代に鉛釉陶が初めて製造されるようになり、漢代においても加彩土器と共に盛んに作られるようになりました。特に前漢代には褐釉陶、後漢代には青銅器を模した緑釉陶が代表的な存在となっていました。

日本における緑釉陶器の歴史

緑釉陶器の製作技術が日本に本格的に導入されるのは、奈良時代の8世紀前半とも言われています。唐三彩（唐時代の三彩技法）を模倣した「奈良三彩」と呼ばれる陶器が製作され、中央の貴族や皇族に供給されていました。そして9世紀初頭、青磁色の高級陶器である越州窯系青磁が輸入されると、国内の陶器もそれに倣って模倣されるようになり、その結果として緑釉陶器が誕生しました。

この陶器は、主に低い融点を持つ鉛や銅を用いた釉薬で仕上げられ、銅の反応により灰釉陶器に比べてより鮮やかな緑色を呈します。焼成方法については、素地となる土器を焼いた後に釉をかけて再度焼成するという手法が用いられます。作られる器の形状は、椀や皿などの食膳具を中心に、唾壺、手付瓶、香炉など多岐にわたります。

生産地と分布

緑釉陶器は、平安京近郊の京都市洛北窯や洛西窯をはじめ、亀岡市や山口県、愛知県猿投窯（日本三大古窯の一つ）、滋賀県水口などで製作されていました。これらの陶器は、中国の高級青磁の代替品として、各地の官庁や寺院へ供給されていました。特に愛知県や山口県の製品は、律令制度に基づいて京へ貢納されていました。

生産は9世紀半ば以降に広がり、猿投窯周辺や尾北窯、豊橋市の二川窯、岐阜県の多治見市まで及びました。特に9世紀初頭には洛北で生産が開始され、その後吉志部瓦窯や東海・防長地域でも生産が行われるようになりました。

まとめ

緑釉陶器は日本の古代陶芸において重要な役割を果たし、その技術とデザインは後の時代にも影響を与えました。施釉技術や焼成方法の発展は、平安時代の陶磁器文化を形作る要素となり、今日でもその美しい造形や色合いが評価されています。

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