生産消費者

生産消費者（プロシューマー）とは

生産消費者（せいさんしょうひしゃ、prosumer）とは、未来学者アルビン・トフラーが1980年に提唱した概念で、生産者（producer）と消費者（consumer）を組み合わせた造語です。これは、単に消費するだけでなく、自ら生産活動にも関わる人々のことを指します。プロシューマーという言葉は、マーケティング用語として、製品（product）と消費者を組み合わせたり、専門的な知識を持つ消費者（professional consumer）を指す場合もありますが、本記事ではトフラーが提唱した概念を中心に解説します。

概念の背景

トフラーは、著書『第三の波』の中で、社会の変遷を三つの波として捉えました。第一の波は、農耕開始による農業革命、第二の波は、産業革命、そして第三の波は、情報化社会の到来です。第一の波の社会では、人々は自給自足に近い生活を送り、市場を通さない生産活動が中心でした。第二の波では、生産者と消費者が分離し、市場経済が発展しました。そして第三の波では、社会の非マス化や製品のカスタマイズ性の向上により、生産者と消費者が再び融合する傾向が見られるとしました。この中で、市場外の生産活動を行う人々を「生産消費者」と定義しました。

金銭経済との関わり

生産消費は、金銭経済と密接に関わっています。例えば、DIY活動に必要な材料の購入は、金銭経済を動かす一方で、完成した製品は市場に代替品を提供します。また、ボランティア活動や家事、育児も、金銭では測れない価値を生み出しています。トフラーは、ATMやセルフレジの利用など、消費者が企業のために無償で行う仕事を「第三の仕事」と名付け、その例として、客が自分で調理するお好み焼きチェーンを挙げています。これらの活動は、市場経済に新たなサービスを生み出す一方、無料コンテンツの増加によって市場の成長を阻害する可能性も指摘されています。

生産消費者の活用事例

日本では、無印良品が消費者の意見を製品開発に反映させる「空想無印」という取り組みを行っています。また、ドン・タプスコットは著書『ウィキノミクス』で、企業がプロシューマーを製品開発に積極的に関与させる重要性を説いています。さらに、3Dプリンタの普及により、製造業においても生産消費者の役割が増大すると予想されています。

生産消費者の課題と展望

生産消費者の活動は、DIYやユーザー生成コンテンツの形で、様々な発展を遂げています。しかし、市場からのより安く高性能な製品やサービスの供給により、企業が生産消費者の役割を担う傾向も見られます。また、品質のばらつきや安定供給の問題も指摘されています。しかし、技術の進歩や社会の変化に伴い、生産消費者の重要性は今後ますます高まると考えられています。

まとめ

生産消費者は、市場経済における新たな動きであり、その影響は多岐にわたります。彼らの活動は、社会に新たな価値を生み出し、経済の発展に貢献する一方で、既存の市場構造を変える可能性も秘めています。今後の社会において、生産消費者の動向はますます注目されるでしょう。

参考文献

- アルビン・トフラー著、徳岡孝夫訳『第三の波』中央公論社、1982年（原著1980年）。
- 島田陽介『プロシューマー入門―新消費市場にヒットを生む　企業と客の両側に立つ新しい視点』第一企画出版、1987年、18-27頁。ISBN 4-924719-40-4。
- 間々田孝夫『消費社会のゆくえ―記号消費と脱物質主義』有斐閣、2005年、39-52頁。ISBN 4-641-17315-X。
- アルビン・トフラー、ハイジ・トフラー著、山岡洋一訳『富の未来』上、講談社、2006年。ISBN 4-06-213452-7。
- アルビン・トフラー、田中直毅『アルビン・トフラー「生産消費者」の時代』日本放送出版協会、2007年。ISBN 978-4-14-081218-1。
- ドン・タプスコット、アンソニー・D・ウィリアムズ著、井口耕二訳『ウィキノミクス―マスコラボレーションによる開発・生産の世紀へ』日経BP社、2007年。ISBN 978-4-8222-4587-0。
- 川又英紀 (2008年4月22日). “プロシューマーとは”. ITpro (日経BP社). https://xtech.nikkei.com/it/article/Keyword/20080402/297845/ 2010年5月5日閲覧。
- 三淵啓自 (2009年12月23日). “三淵啓自のECの波頭　コンテンツ大国への道 - 仮想世界、不正コピー阻む”. 日経MJ (日本経済新聞社): p. 7

外部リンク

- 消費者と事業者の新しい関係（PDF）

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