生神女就寝スヴャトヒルシク大修道院

スヴャトヒルシク大修道院：歴史と変遷、そして戦火の爪痕

ウクライナのドネツィク州スヴャトヒルシク市に位置する生神女就寝スヴャトヒルシク大修道院は、ウクライナ正教会（モスクワ総主教系）におけるラヴラ（大修道院）の格式を持つ重要な修道院です。この修道院は、ウクライナ正教において首都キーウのペチェールシク大修道院、西部テルノーピリ州のポチャイウ大修道院と並び、非常に重要な存在とされています。多くの巡礼者も訪れる場所として知られています。

歴史

この修道院の歴史は古く、1624年の資料に初めて登場しますが、15世紀には既に修道士が定住していたと考えられています。当初はクリミア・ハン国によって度々荒らされる「荒野」の中の小さな修道院でした。

1787年、エカテリーナ2世によって修道院は閉鎖されましたが、その後、グリゴリー・ポチョムキン公の相続人であるアレクサンドル・ミハイロヴィッチ・ポチョムキン夫妻の尽力により再建されました。

第一次世界大戦以前には、ビザンティン建築の美しい塔を持つ修道院に約600人もの僧侶が暮らしていましたが、十月革命以降はボリシェヴィキによる略奪や破壊行為に見舞われました。1922年にソビエト連邦が成立すると、修道院は閉鎖され、労働者のための療養所として利用されました。さらに1930年代には、一部の建物がソビエト連邦政府によって取り壊されるなど、荒廃の一途を辿りました。

1991年のソビエト連邦崩壊後、修道院は修復され、1992年には再開。2004年には正式にラヴラの称号が与えられました。その後、修道院のコミュニティは100人以上の修道士で構成され、その数は年々増加していました。

2014年、ロシアの支援を受けたドネツク人民共和国が樹立を宣言すると、修道院長は分離独立派を公然と支持しました。これに対しウクライナ当局は、修道院が親ロシア派の戦闘員を匿い、武器を隠していると非難するなど、政治的な対立が表面化しました。

2022年ロシアのウクライナ侵攻による被害

2022年2月以降のロシアによるウクライナ侵攻は、この大修道院にも甚大な被害をもたらしました。

3月12日には、ロシア軍の砲撃が修道院と市街を結ぶ橋の近隣に着弾。修道院の建物は窓やドアが吹き飛ばされる被害を受け、また、多くの負傷者が出ました。当時、約520人の民間人が戦火を逃れて修道院に避難していました。

5月5日には、再びロシア軍の砲撃があり、修道院内で7人が負傷しました。さらに5月30日の砲撃では、敷地内の2つの建物が破壊され、修道士2人と修道女1人が死亡、修道士3人が負傷するという痛ましい結果となりました。6月2日には、亡くなった僧侶たちの葬儀を執り行おうとしましたが、絶え間ない砲撃により、埋葬は6月3日に持ち越されました。6月3日には、病院で治療を受けていた3人の修道士が死亡、さらに2人の重傷者が病院に収容されました。

近隣の住民はドニプロなどの都市に避難していましたが、大修道院は長距離移動が困難な高齢者などを中心に受け入れ、世話をしていました。また、5月に入ってから、ボホロディチネ村では電気、水道、通信が途絶え、外界から遮断された状況となり、同村の生神女教会の女子修道院も砲撃で大破しました。大修道院では、ボホロディチネからの避難者を受け入れ共同生活を送っていたところ、砲撃は避難者が利用していた小部屋の建物を直撃しました。

6月4日には、修道院の主聖堂であるВсіхсвятського скита（万聖僧院）が、砲撃による火災で焼失しました。この教会はウクライナ最大の木造建築教会であり、その焼失は大きな損失となりました。

現在

スヴャトヒルシク大修道院は、歴史的、宗教的に重要な場所であると同時に、ウクライナにおける紛争の象徴ともなっています。この修道院の再建と、平和な日々が再び訪れることが望まれています。

関連情報
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至聖三者聖セルギイ大修道院（セルギエフ・ポサード）
外部リンク
svlavra.church.ua
7chudes.in.ua
* sobory.ru

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