田中ケロ
田中ケロ氏（たなか けろ、1959年1月6日生）は、長年にわたり日本のプロレス界、特に新日本プロレスのリングを彩った、カリスマ的なプロレスリングアナウンサーでありナレーターです。愛知県稲沢市の出身で、本名は田中秀和。現在活動名としている「ケロ」は、カエルに似ていることに由来する愛称が定着したものです。芸能プロダクションONE COLORに所属しています。また、グラビアアイドルの長女・田中絵瑠氏、声優の次女・田中音緒氏の父親でもあります。
幼少期は父親の仕事の関係で国内各地を転々とし、青森県の弘前市で高校時代を過ごしました。
プロレスとの関わりは、大東文化大学経済学部在学中に新日本プロレスでアルバイトを始めたのがきっかけです。卒業後、そのまま社員として入社。1980年8月22日、品川プリンスホテル・ゴールドホール大会のジョージ高野対荒川真戦で初めてリングアナウンサーとしてコールを行いました。
彼のリングアナウンススタイルは、先代の倍賞鉄夫氏（アントニオ猪木氏の元義弟）の手法をベースに、自身の個性を加えて確立されたものです。現在のプロレスリングアナウンサーにおける一般的な紹介方法や言葉の強弱のつけ方は、彼によって広められたと言えます。
田中氏の真骨頂とも言えるのが、ビッグマッチでの「前口上」です。特に東京ドーム大会などでは、試合開始前に熱のこもった語りで観客のボルテージを最高潮へと引き上げました。中でも、スポーツ界全体に影響を与えるとの信念のもとで行われた、蝶野正洋対三沢光晴戦前の前口上「K-1! PRIDE! プロ野球! Jリーグ! いいか、よく見ていろ! これがプロレスのパワーだ! プロレスは、絶対に負けない!」は非常に有名で、PlayStation 2用ゲームソフト『キングオブコロシアム』に裏技として収録されるほど、語り草となっています。
リングアナ業務に加え、新日本プロレス在籍時には選手の素顔や遠征の様子を綴ったコラム「旅日記」を執筆。ウェブサイトやパンフレット、週刊ゴングに掲載され、毎年その内容をまとめた単行本も出版されました。
2003年頃からは、邪道選手や外道選手、竹村豪氏選手といった一部の選手からの襲撃を受ける場面が増えました。試合開始を告げる木槌で頭部を殴打され、流血し包帯姿でリングに立つこともあり、負傷時には他のリングアナウンサーが代役を務めることもありました。
2005年5月からは執行役員にも就任しましたが、2006年2月19日の両国国技館大会を最後に新日本プロレスを退社し、フリーランスとして活動を開始しました。
フリー転向後の初陣となったDDTでは、インディー団体ファンからの厳しい視線に晒され、「ケロさん、過去の発言を一言でいいから謝ってください。インディファン一同」という横断幕が掲げられる一幕も。また、団体の代表である高木三四郎氏とはリング内外で激しい舌戦を繰り広げ、話題を呼びました。その後は、元新日本プロレス所属選手を中心としたユニット「ケロ軍団」を率いてDDTの興行を盛り上げました。
その後、藤波辰爾氏が率いる無我ワールド・プロレスリングにも参加しましたが、団体内の混乱に伴い退社し、2008年からは再びフリーの立場で活動しています。プロレス以外のシュートボクシング興行など、様々なジャンルでリングアナウンスの腕前を発揮しています。
2009年7月には、リング上での愛称であった「ケロ」を正式な活動名「田中ケロ」としました。フリーとなってからも、2012年の新日本プロレス旗揚げ記念日大会（IWGPヘビー級選手権）や2013年東京ドーム大会など、古巣のビッグマッチで特別リングアナウンサーを務める機会もありました。2020年1月4日には、同じく東京ドームで獣神サンダー・ライガー選手の引退試合のリングアナを務め、大きな感動を呼びました。プロレス以外の分野では、2012年にももいろクローバーZのライブに出演したり、東京競馬場の日本ダービー前日イベントで騎手紹介を行ったりするなど、その多彩な才能を発揮しています。
その他のリングアナウンサーとしての功績として、選手の体格紹介において、それまでのヤード・ポンド法による「ポンド」のみのアナウンスから、身長と体重を国際単位系で示す「センチ・キロ」形式を導入したことが挙げられます。この形式は、現在では多くのプロレス団体や総合格闘技の大会で採用されていますが、最初にこれを試みたのは田中氏でした。
また、試合の開始・終了を告げる「ゴング」も長年担当していました。試合序盤でもフォールの気配を感じると木槌を構え、瞬時に、そしてリズミカルにゴングを打ち鳴らすその技術は高く評価され、週刊プロレスには「良いタイミングで小気味良く、聞いている側に気持ちよさを与えるゴング音」と評されたこともあります。
新日本プロレス時代は、タイガー・ジェット・シン選手のような制御不能な存在の襲撃対象となることも多く、リング上での危険と常に隣り合わせでした。そのため、基本給とは別にリング危険手当が支給されていたというエピソードも残されています。
また、昭和から平成中期にかけての新日本プロレス会場では、観戦マナーに問題のある観客を会場外へ排除するという暗黙のルールが存在しました。船木誠勝氏の証言によれば、田中氏が若手選手に「その客を会場の外へつまみ出せ!」と指示し、若手が実際に観客を物理的に排除することもあったとされています。排除後の対応も、髙田延彦氏と仲野信市氏が別室で縛り付けたり、獣神サンダー・ライガー選手がエレベーターに押し込んだりするなど、時代を感じさせる過激なものでした。
2021年7月末、田中氏は新型コロナウイルスに感染し、一時は意識不明の重体となりました。同居する次女・音緒氏がホテルで療養する中、田中氏への連絡が途絶えたことから音緒氏が自宅へ戻り、発見に至ったのです。病院で集中治療室での治療を受け、心停止寸前の危機も経験しましたが、家族（特に音緒氏による「声が命」として喉へのチューブ挿管を拒否した判断）の懸命な支えもあり、奇跡的に回復へと向かいました。肺や脳への後遺症、投薬の影響が懸念されていましたが、リハビリを経て快方に向かい、2021年10月に退院、専門病院へ転院しました。2022年1月1日には自身のTwitterで動画を公開し、「人間vsコロナ史上最大の決戦」と称する往年の前口上を披露。後遺症を感じさせない元気な姿を見せました。そして、2022年3月1日、新日本プロレスの日本武道館大会で行われた旗揚げ50周年記念セレモニーでリングアナウンサーとして復帰。約半年ぶりに表舞台に姿を現し、多くのファンに感動を与えました。
プロレスリングアナウンサーという枠を超え、その個性的なキャラクターと巧みな話術で多方面に影響を与え続けている田中ケロ氏。彼の活動は、著書やナレーターとしての仕事、SNSでの発信など多岐にわたります。
主な著書
『ケロのモノを投げないでください』（1984年）
『ケロの新日本プロレス奇行』（1989年）
『プロレス最強軍団のお通りだい―ケロの新日本プロレス旅日記』（1989年）
他多数
主な出演
Amazonプライム・ビデオ『有田と週刊プロレスと』（ナレーション）
NHK-FM『今日は一日“プロレス格闘技入場曲”三昧』
* NHKラジオ第1『闘魂フォーエバー アントニオ猪木さんをしのんで』
幼少期は父親の仕事の関係で国内各地を転々とし、青森県の弘前市で高校時代を過ごしました。
プロレスとの関わりは、大東文化大学経済学部在学中に新日本プロレスでアルバイトを始めたのがきっかけです。卒業後、そのまま社員として入社。1980年8月22日、品川プリンスホテル・ゴールドホール大会のジョージ高野対荒川真戦で初めてリングアナウンサーとしてコールを行いました。
彼のリングアナウンススタイルは、先代の倍賞鉄夫氏（アントニオ猪木氏の元義弟）の手法をベースに、自身の個性を加えて確立されたものです。現在のプロレスリングアナウンサーにおける一般的な紹介方法や言葉の強弱のつけ方は、彼によって広められたと言えます。
田中氏の真骨頂とも言えるのが、ビッグマッチでの「前口上」です。特に東京ドーム大会などでは、試合開始前に熱のこもった語りで観客のボルテージを最高潮へと引き上げました。中でも、スポーツ界全体に影響を与えるとの信念のもとで行われた、蝶野正洋対三沢光晴戦前の前口上「K-1! PRIDE! プロ野球! Jリーグ! いいか、よく見ていろ! これがプロレスのパワーだ! プロレスは、絶対に負けない!」は非常に有名で、PlayStation 2用ゲームソフト『キングオブコロシアム』に裏技として収録されるほど、語り草となっています。
リングアナ業務に加え、新日本プロレス在籍時には選手の素顔や遠征の様子を綴ったコラム「旅日記」を執筆。ウェブサイトやパンフレット、週刊ゴングに掲載され、毎年その内容をまとめた単行本も出版されました。
2003年頃からは、邪道選手や外道選手、竹村豪氏選手といった一部の選手からの襲撃を受ける場面が増えました。試合開始を告げる木槌で頭部を殴打され、流血し包帯姿でリングに立つこともあり、負傷時には他のリングアナウンサーが代役を務めることもありました。
2005年5月からは執行役員にも就任しましたが、2006年2月19日の両国国技館大会を最後に新日本プロレスを退社し、フリーランスとして活動を開始しました。
フリー転向後の初陣となったDDTでは、インディー団体ファンからの厳しい視線に晒され、「ケロさん、過去の発言を一言でいいから謝ってください。インディファン一同」という横断幕が掲げられる一幕も。また、団体の代表である高木三四郎氏とはリング内外で激しい舌戦を繰り広げ、話題を呼びました。その後は、元新日本プロレス所属選手を中心としたユニット「ケロ軍団」を率いてDDTの興行を盛り上げました。
その後、藤波辰爾氏が率いる無我ワールド・プロレスリングにも参加しましたが、団体内の混乱に伴い退社し、2008年からは再びフリーの立場で活動しています。プロレス以外のシュートボクシング興行など、様々なジャンルでリングアナウンスの腕前を発揮しています。
2009年7月には、リング上での愛称であった「ケロ」を正式な活動名「田中ケロ」としました。フリーとなってからも、2012年の新日本プロレス旗揚げ記念日大会（IWGPヘビー級選手権）や2013年東京ドーム大会など、古巣のビッグマッチで特別リングアナウンサーを務める機会もありました。2020年1月4日には、同じく東京ドームで獣神サンダー・ライガー選手の引退試合のリングアナを務め、大きな感動を呼びました。プロレス以外の分野では、2012年にももいろクローバーZのライブに出演したり、東京競馬場の日本ダービー前日イベントで騎手紹介を行ったりするなど、その多彩な才能を発揮しています。
その他のリングアナウンサーとしての功績として、選手の体格紹介において、それまでのヤード・ポンド法による「ポンド」のみのアナウンスから、身長と体重を国際単位系で示す「センチ・キロ」形式を導入したことが挙げられます。この形式は、現在では多くのプロレス団体や総合格闘技の大会で採用されていますが、最初にこれを試みたのは田中氏でした。
また、試合の開始・終了を告げる「ゴング」も長年担当していました。試合序盤でもフォールの気配を感じると木槌を構え、瞬時に、そしてリズミカルにゴングを打ち鳴らすその技術は高く評価され、週刊プロレスには「良いタイミングで小気味良く、聞いている側に気持ちよさを与えるゴング音」と評されたこともあります。
新日本プロレス時代は、タイガー・ジェット・シン選手のような制御不能な存在の襲撃対象となることも多く、リング上での危険と常に隣り合わせでした。そのため、基本給とは別にリング危険手当が支給されていたというエピソードも残されています。
また、昭和から平成中期にかけての新日本プロレス会場では、観戦マナーに問題のある観客を会場外へ排除するという暗黙のルールが存在しました。船木誠勝氏の証言によれば、田中氏が若手選手に「その客を会場の外へつまみ出せ!」と指示し、若手が実際に観客を物理的に排除することもあったとされています。排除後の対応も、髙田延彦氏と仲野信市氏が別室で縛り付けたり、獣神サンダー・ライガー選手がエレベーターに押し込んだりするなど、時代を感じさせる過激なものでした。
2021年7月末、田中氏は新型コロナウイルスに感染し、一時は意識不明の重体となりました。同居する次女・音緒氏がホテルで療養する中、田中氏への連絡が途絶えたことから音緒氏が自宅へ戻り、発見に至ったのです。病院で集中治療室での治療を受け、心停止寸前の危機も経験しましたが、家族（特に音緒氏による「声が命」として喉へのチューブ挿管を拒否した判断）の懸命な支えもあり、奇跡的に回復へと向かいました。肺や脳への後遺症、投薬の影響が懸念されていましたが、リハビリを経て快方に向かい、2021年10月に退院、専門病院へ転院しました。2022年1月1日には自身のTwitterで動画を公開し、「人間vsコロナ史上最大の決戦」と称する往年の前口上を披露。後遺症を感じさせない元気な姿を見せました。そして、2022年3月1日、新日本プロレスの日本武道館大会で行われた旗揚げ50周年記念セレモニーでリングアナウンサーとして復帰。約半年ぶりに表舞台に姿を現し、多くのファンに感動を与えました。
プロレスリングアナウンサーという枠を超え、その個性的なキャラクターと巧みな話術で多方面に影響を与え続けている田中ケロ氏。彼の活動は、著書やナレーターとしての仕事、SNSでの発信など多岐にわたります。
主な著書
『ケロのモノを投げないでください』（1984年）
『ケロの新日本プロレス奇行』（1989年）
『プロレス最強軍団のお通りだい―ケロの新日本プロレス旅日記』（1989年）
他多数
主な出演
Amazonプライム・ビデオ『有田と週刊プロレスと』（ナレーション）
NHK-FM『今日は一日“プロレス格闘技入場曲”三昧』
* NHKラジオ第1『闘魂フォーエバー アントニオ猪木さんをしのんで』
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