田中判決解散

田中判決解散とは

田中判決解散（たなかはんけつかいさん）は、1983年11月28日に行われた衆議院解散の通称です。この解散は、ロッキード事件における田中角栄元首相への判決が大きく影響したため、このように呼ばれています。

解散に至る背景

1983年1月、ロッキード事件の第一審公判を受けていた田中角栄元首相に対し、同年6月に結審、10月前後に第一審判決が下されるとの見通しが報じられました。この判決を前に、衆議院を解散するタイミングについて、自民党内では意見が分かれていました。

田中派は、「ロッキード事件の判決前に衆院選を行った方が有利である」とし、「臨時行政調査会の最終答申を受けて行政改革を争点にできる」と主張。判決前の衆参同日選挙を主張しました。しかし、反対派は「田中派主導の印象が強すぎる」ことや、「1980年の同日選挙は大平首相の急死直後であり、自民党票が増加したが、同じ結果を期待するのは難しい」として、同日選挙に反対しました。

中曽根康弘首相も、外交日程を重視したため反対派に同調し、4月27日にはアジア各国歴訪を前に、その国会での衆議院解散を行わないことを表明。これにより、衆議院解散・衆参同日選挙の機運は沈静化しました。その後、第13回参議院議員通常選挙の投票日翌日である6月27日に、田中元首相への判決が10月12日になることが正式に決定されました。

田中判決と政界の動揺

1983年10月12日、東京地方裁判所で行われたロッキード事件の第一審判決公判で、田中角栄元首相に対し、懲役4年・追徴金5億円の実刑判決が言い渡されました。無罪を主張していた田中元首相は、議員辞職を拒否し、即日控訴を表明。判決後には、「わが国の民主主義を守り、再び政治の暗黒を招かないためにも一歩もひくことなく前進を続ける」との所感を発表しました。これに対し、福田赳夫元首相は「気が違ったんじゃないか」と発言し、三木武夫元首相は「政治の暗黒とは自分のことじゃないか」と批判しました。

元首相への実刑判決は国会を大きく揺るがし、野党は田中元首相に対する議員辞職勧告決議案の上程、採決を強く主張しました。国会審議は停滞し、総選挙の時期が与野党間の焦点となっていきました。田中元首相が中曽根首相に解散を促し、福田衆議院議長と木村参議院議長が連名で、政府提出の重要法案の審議を促進させることを野党に同意させた上で、衆議院解散を行うという斡旋案を提示。与野党がこれを受け入れたため、重要法案成立後に中曽根内閣が衆議院解散を決定しました。

解散後の総選挙と政界再編

1983年11月28日、衆議院は解散され、12月18日に第37回衆議院議員総選挙が行われました。田中角栄元首相は新潟3区で自身最高の22万761票を獲得しトップ当選を果たしましたが、自民党は田中判決の逆風を受け、過半数割れとなりました。自民党は政権を維持するために新自由クラブと連立政権（第2次中曽根内閣）を組むこととなり、1955年から28年続いた自民党単独政権は一旦終焉を迎えました。

田中判決解散は、日本の政治史における大きな転換点となり、その後の政界再編に大きな影響を与えました。

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