田中舘秀三

田中館秀三について

田中館秀三（たなかだて ひでぞう）は、1884年（明治17年）に岩手県二戸市で生まれ、1951年（昭和26年）に亡くなった日本の地質学者、火山学者です。東京帝国大学を卒業し、理学博士の学位を取得しました。彼の研究は、火山学の分野において重要な貢献を果たし、また教育者としても多くの人材を育成しました。また、戦時中にはシンガポール植物園の保護に尽力するなど、その活動は多岐にわたります。

生い立ちと教育

田中館秀三は、出生名を下斗米秀三といいました。東京帝国大学理科大学地質学科を首席で卒業し、恩賜の銀時計を授与されました。その後、血縁関係にあった田中舘愛橘の養子となり、田中館姓を名乗るようになりました。さらに愛橘の娘である美稲と結婚しました。

研究活動

1909年、25歳という若さで東北帝国大学農科大学教授兼助教授に就任し、高等官7等に叙されました。1910年からは、ドイツとイタリアに6年間留学し、特にイタリア留学中に行ったヴェスヴィオ火山の研究は有名です。また、昭和新山の命名者であり、鹿児島県の昭和硫黄島の新島噴火を詳細に調査しました。

彼は、北海道帝国大学、東北帝国大学、ナポリ大学で火山学、湖沼学、経済地理学を講義し、万国火山学会の副会長も務めました。著書には「日本のカルデラ」「マリアナ・イタリアの火山」「東北地方の経済地理研究」などがあります。

戦時中の活動

太平洋戦争中、田中館は北海道帝国大学理学部助教授と東北帝国大学法文学部講師を兼任し、日本の占領下にあったシンガポールでシンガポール博物館長とシンガポール植物園長を務めました。彼は、世界有数の熱帯植物園であったシンガポール植物園の保護に尽力し、その功績は敵国であったイギリスからも「破格の国際感覚と行動力の持ち主」と称賛されました。

田中館は、自ら『南方文化施設の接収』という著書を執筆し、この時期の活動について詳細に記録しています。

主な著作

『北海道火山湖研究概報』(1915年)
『山東省ノ地質鉱山』(1922年)
『十勝岳爆発概報 大正一五年六月二五日』(1926年)
『日本のカルデラ』(1933年)
『東北地方市町村別人口密度表』(1934年)
『東北地方の凶作に就て』(1934年)
『ウラスカ火山の調査』(1937年)
『湖沼学』(1937年)
『海洋学』(1937年)
『市町村名の読方及び市町村面積人口密度表』(1937年)
『日本ノ人口 本州ニ於ケル農村ノ地方的分布』(1940年)
『南方文化施設の接収』(1944年)
『田中館秀三 業績と追憶』(1975年)

主な論文

「伊太利の火山」(1918年)
「北海道本島の火山湖」(1919年)
「北海道の火山湖」(1924年)
「関東大地震と海岸の昇降運動」(1926年)
「阿蘇火山活動の現状」(1929年)
「蝦夷富士半月湖附湖水の新分類」(1927年)
「北海道雌阿寒岳鳴動」(1927年)
「奥丹後地震の際海岸の昇降運動」(1927年)
「阿蘇火山最近の活動」(1929年)
「駒ケ岳噴火史料」(1930年)
「瑞典海岸の土地昇降運動に就いて」(1932年)
「北千島新火山島（武富島）噴出に関する蒐集資料」(1934年)
「武富火山島調査概報」(1935年)
* 「昭和9年度鹿児島県硫黄島附近海中噴火資料（続）」(1935年)


田中館秀三は、地質学、火山学の研究者としてだけでなく、教育者、そして国際的な文化財保護活動家として、多岐にわたる分野で重要な貢献を果たした人物でした。

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