田代喜久雄

田代喜久雄について

田代喜久雄（たしろ きくお、1917年4月22日 - 1993年5月14日）は、日本のメディア界で名を馳せた新聞記者及び実業家です。熊本県出身の彼は、早稲田大学の仏文学科を卒業後、新聞業界に身を投じました。

来歴と初期の経歴

1940年に満州経済社での勤務を経て朝日新聞社に入社。その年の9月には応召され、南方で左肩に銃創を負い、その後内地に移送されました。戦後には鹿児島で本土決戦に備え、陸軍中尉として敗戦を迎えましたが、1945年には「ただいま、帰りました」と言って編集局に復帰しました。

社会部長としての業績

1954年に社会部次長に就任し、以降は優れた判断力と迅速な決断で部員の信頼を得ることに成功しました。社会部長に任じられた1959年には、新設された第2社会面を駆使し、従来の枠を超えた視点で社会現象を深く掘り下げる記事を執筆しました。特に、解説雑報の導入や長尺のルポの掲載は、社会部のスタイルを大きく変えるものでした。

1962年には、読者の投書を通じてサリドマイド薬害について掘り下げ、記事として報じたことで、社会的な注目を集めました。この初報により、薬害問題に対する関心が高まり、業界でも反響がありました。彼のリーダーシップの下、この時期の社会部は非常に活発化し、人気を博しました。

編集局長就任と東京本社ビルの新築計画

その後、田代は1966年に東京本社編集局長に就任し、69年には取締役となりました。この頃には築地への移転計画を進め、1980年に新社屋が完成しました。田代はまた、村山騒動では反村山派として活動し、出世を果たしましたが、その反面では一部の部下に対してえこひいきをしたとも言われます。

テレビ朝日への転身

1981年には全国朝日放送（現・テレビ朝日）の副社長に転任し、1983年には社長に昇格しました。同社のスタジオ建て替えに際しては、森ビルとの協力のもと、新しいスタジオの計画を成し遂げました。1985年には、久米宏をメインキャスターとし、視聴者から高い評価を受けた報道番組『ニュースステーション』を開始しました。

しかし、同時期に発覚したアフタヌーンショーの「やらせリンチ事件」が彼にとっての大きな試練となり、会社としては世間に謝罪する事態に追い込まれました。

晩年と死去

1989年には代表取締役相談役に退き、1993年に肝不全のため76歳で亡くなりました。田代の死は、日本のメディア界における一つの時代の終焉を意味したといえるでしょう。彼の業績は、今なお多くの人々に影響を与え続けています。

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