田辺南龍

田辺南龍の歴史

田辺南龍とは、長い歴史を持つ講釈師の名跡で、複数の代を経てその名を受け継いでいます。特に口癖や得意な語りのスタイルは、各代の南龍に共通しており、その伝統は今もなお連綿と続いています。

初代 田辺南龍

初代田辺南龍は、本名を荻沼作内といい、1810年に下総国で生まれました。農家の子供として育った彼は、軍談を得意とし、その口から発せられる「のんのん、ずいずい」という口癖は、多くの聴衆に愛されました。このフレーズは、後の世代でも引き継がれることになります。彼の業績は、講談の発展に寄与し、後の名跡の礎を築きました。

2代目 田辺南龍

2代目田辺南龍は、本名松野房次郎で、1839年に生まれました。御家人の家系に生まれながらも、自身は道楽者としての道を選び、初代南龍の門下に入ります。彼は修羅場や人情講談に腕を振るい、再び「のんのん、ずいずい」という口癖を使い続けました。彼の名は、小説家夏目漱石の随筆にも登場し、その影響力の大きさを物語っています。

3代目 田辺南龍

3代目は、高宮半治郎という本名で知られ、2代目の弟とも言われていますが、彼の生没年や襲名の確実な年は不明です。1885年または1886年頃に南龍を名乗った可能性があると言われています。彼もまた、先代から受け継いだトラディショナルな語りを大事にしていました。

4代目 田辺南龍

4代目田辺南龍に関しては本名や生没年が不詳ですが、2代目松林伯圓の門弟であり、松林伯一という名前でも知られています。彼は「しゃも屋円玉」とも呼ばれるなど、多角的な活動を行いました。

5代目 田辺南龍

五代目田辺南龍は、1878年に誕生し、本名は関川正太郎です。神田区で生まれ育ち、早くから講談の世界に身を投じました。彼は13歳で師匠に弟子入りし、キャリアを築いていきます。病気からの復帰後、双龍斎貞鏡に入門し、数年後には五代目田辺南龍を襲名。戦中は教育講談師としても活躍し、1953年には芸術祭賞を受賞しました。

田辺南龍の名跡は、各代ごとの個性的な講談師によって支えられてきました。彼らの語る物語は、日本文化の深層に触れる重要な要素となっており、現在も多くの人々に親しまれています。

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