田辺裕 (地理学者)

田辺裕（たなべ ひろし）

田辺裕（1936年10月6日生まれ）は、著名な日本の人文地理学者であり、東京大学名誉教授です。現在は広尾学園小石川中学校・高等学校の学園長を務めています。

専門分野と業績

田辺先生は、政治地理学の立場から、市町村の領域と内部構造に関する研究で高い評価を受けています。特に、明治時代の市町村合併に関する研究は、その分野における重要な貢献とされています。また、フランスの地理学的研究に早くから取り組み、その成果を日本に紹介するとともに、日仏間の文化交流にも尽力しました。

経歴

神奈川県に生まれた田辺先生は、神奈川県立横浜翠嵐高等学校を経て東京大学に進学。学生時代には文芸同人誌に参加するなど、文学的な一面も持っていました。1959年に東京大学教養学部教養学科人文地理学専攻を卒業後、大学院に進み、1963年に博士課程を中途退学し、教養学部の助手となります。

1966年には、「行政地域としての市町村の地理学的研究」で理学博士の学位を取得。1966年から2年間、フランスのレンヌ大学に留学し、現地の地理学研究に触れました。帰国後、1971年に東京大学教養学部の助教授、1986年に教授に昇任。1991年からは外務省文化交流部より派遣され、パリ国際大学都市日本館の館長を務め、1993年に帰国。

1997年に東京大学を定年退官し、名誉教授の称号を受けました。その後、慶應義塾大学経済学部の教授に転じ、同年、フランス政府より教育功労章オフィシエを授与されています。

2002年に慶應義塾大学を定年退職した後は、帝京大学経済学部の教授となり、大学院経済学研究科長、経済学部長などを歴任し、2010年に退任。2000年から2008年まで、国際地理学連合 (IGU) の副会長を務め、国際的な地理学の発展にも貢献しました。

2013年には、広尾学園中学校・高等学校の校長に就任。2014年には環太平洋大学の理事、特任教授にも就任しています。2019年に広尾学園中学・高校校長を退任し、村田学園の学園長に転任。同年には、国連地名専門家グループ アジア東部地域部会長に就任するなど、幅広い分野で活躍を続けています。

著書

田辺先生は、多数の著書や論文を発表しており、日本の人文地理学の発展に大きく貢献しています。

『人文地理学とその周辺』(1997年)
『もう一度読む山川地理』(2012年)
『奇跡の学校 広尾学園の挑戦』(2019年)
『地名の政治地理学 地名は誰のものか』(2020年)
『境界の政治地理学 境界は動くのか』(2022年)
『地理・地誌・地理学の論理構造』(2024年)

これらの著書は、地理学の研究者だけでなく、一般の読者にも地理学への関心を深めるきっかけを与えています。

人物

田辺先生は、地理学の研究者としてだけでなく、教育者としても多くの学生を指導し、育成してきました。その温厚な人柄と、学問に対する真摯な姿勢は、多くの人々から尊敬を集めています。

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