田順

田順（でん じゅん、生年不明 - 紀元前71年）は、古代中国、前漢時代の官僚であり軍人です。彼は雲中太守、虎牙将軍という役職を歴任し、富民侯にも封じられました。

田順は、武帝と宣帝の二代に仕えた丞相、田千秋（車千秋）の子として生まれました。元鳳4年（紀元前77年）に父である田千秋が亡くなると、その跡を継いで富民侯となりました。

本始2年（紀元前72年）、宣帝が匈奴に対する大規模な攻撃を計画した際、当時、雲中太守であった田順は、虎牙将軍に任命されました。彼は3万余騎の兵を率いて、五原郡から匈奴へ向けて出撃するよう命令を受けました。この遠征は、本始3年（紀元前71年）1月に開始され、田順を含む5人の将軍が、総勢15万騎を率いるという大規模なものでした。

田順は、軍を率いて800里（約330km）以上を進軍し、旦余吾水という場所まで到達しました。この戦いにおいて、田順の軍は斬首および捕虜の合計で1900人以上を出し、馬、牛、羊を合わせて7万頭以上を奪うという戦果を挙げました。しかし、帰還後、宣帝は田順が定められた期限を守らなかったこと、そして略奪した頭数を実際よりも多く報告したことを問題視し、詳細な取り調べを行わせました。その結果、田順は自らの罪を認め、自殺という形で生涯を終えました。

田順の生涯は、前漢時代の官僚と軍人のあり方、そして皇帝の権力の一端を示すものとして、歴史に記録されています。匈奴との戦いにおける彼の功績と、その後の悲劇的な結末は、当時の政治情勢や社会構造を理解する上で重要な要素となっています。

参考文献：
班固『漢書』
小竹武夫訳『漢書』1から8、筑摩書房、ちくま学芸文庫、1998年。
* 中央研究院・歴史語言研究所「漢籍電子文献資料庫」

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