甲州八珍果

甲州八珍果の歴史と魅力

甲州八珍果（こうしゅうはっちんか）、または甲斐八珍果（かいはっちんか）は、江戸時代から山梨県で生産される代表的な8つの果物を指します。これには、ブドウ、ナシ、モモ、カキ、クリ、リンゴ、ザクロ、クルミまたはギンナンが含まれています。この豊かな果物の生産は、山梨県がフルーツ王国を自称する一因ともなっており、果樹栽培の歴史は深く根付いています。

山梨県と果物の関係

山梨県の耕地率はおよそ5.9%ですが、果樹栽培が非常に活発であり、その土地生産性は特に高いです。しかし、1925年には果実が農業生産額のわずか2.9%を占めていたため、基幹農産物はイネやカイコだったことが確認されています。果物栽培が本格的に盛んになったのは1960年代以降で、日本住血吸虫の対策や養蚕の不況を受けて果樹栽培に転換された時期です。特に、堅実な交通網が整備され、果物の需要が高まったことで、山梨県は果樹生産の中心となりました。

山梨県は「フルーツ王国」として、ブドウやモモ、スモモの栽培面積と生産量が日本一を誇ります。これに加え、山梨の気候や地形も果樹栽培を支える重要な要素です。山々に囲まれた地形は季節風の影響を受けにくく、日照時間が長く、降水量も少ないことから、果樹栽培に理想的な条件を整えています。また、土壌は肥沃であり、これにより多様な種類の果物が育成されています。

甲州八珍果の歴史

日本の歴史的記録によると、奈良時代には既にクルミが献上されており、平安時代にはナシが甲斐国の名産品として知られていました。江戸時代には、甲斐国の経済発展に果物が寄与するようになり、特に甲州街道が整備されたことで江戸市場との結びつきが強まりました。多くの果物が江戸幕府へ献上され、ブドウ、ナシ、カキといった品種が特に重宝されました。

また、ブドウに対する課税方法が変更されるなど、経済的にも重要な地位を確立していました。一方、ナシへの課税は江戸時代を通して木ごとに行われました。その範囲は広く、果物の加工品や名産品も生産されていました。たとえば、柿渋やぶどうづけ、名菓の生産などが行われ、地域経済を支えていました。

提唱者とその背景

甲州八珍果という言葉が誰によって、いつ決められたのかは曖昧ですが、浅野長政や柳沢吉保、小島蕉園など、有力な推進者がいたと言われています。彼らは果樹の増産を奨励し、甲斐国内の産業振興に貢献したとされています。

各果物の特徴

ブドウ

ブドウは甲州八珍果の中でも特に有名な果物で、古くから栽培が行われてきました。文治2年には自生していた甲州種が栽培の起点となり、次第に収穫量が増えました。江戸時代には主に江戸に出荷されるなど、地域の特産品として名を馳せていました。

ナシ

ナシは山梨の県名にも関わるくらいの歴史を持ち、栽培も長い間行われています。ニホンヤマナシの現存木が大月市に見られる他、いくつかの品種が現在でも栽培されています。

モモ

モモの栽培は19世紀後半から始まり、特に昭和初期に多く栽培されるようになりました。戦後は民間の農家によって再び脚光を浴びています。

カキ

現在では山梨での生産量は減少傾向にありますが、高級甘柿が栽培されている地域も存在します。

クリ

クリは小規模な栽培が中心ですが、美味しい品質が求められ、独自の生産が行われています。

このように、甲州八珍果は山梨県の歴史、文化、経済に深くかかわる重要な要素として位置づけられています。果樹栽培の多様性と豊かさを伝え続けていることは、今後の地域振興にも寄与するでしょう。

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