甲府戦争

甲府戦争：昭和の激動期に起きた暴力団抗争事件

甲府戦争は、1962年10月9日に山梨県甲府市で勃発した、鶴政会（後の稲川会）と加賀美一家との間で繰り広げられた大規模な暴力団抗争事件です。この抗争は、当時の社会情勢や暴力団組織の内部事情が複雑に絡み合い、多くの人々を巻き込む事態となりました。

抗争の背景

1962年10月7日、鶴政会横須賀一家の組員である川上三喜が、家族旅行で石和温泉を訪れました。その後、彼は甲府市内でかつての若衆であった内東高宏らと再会し、10月9日未明にキャバレーで合流。しかし、店を出たところで加賀美一家の組員に囲まれ、拉致未遂事件が発生します。

この事態を知った横須賀一家は、総長不在の中、代貸の村岡正が組員70人を甲府へ向かわせます。10月10日、甲府に到着した横須賀一家組員に対し、川上は自ら報復することを宣言。もし失敗した場合は、横須賀一家に加賀美一家への襲撃を依頼しました。

加賀美襲撃事件

10月11日朝、川上と内東は加賀美猛が経営する加賀美土建の事務所前で待ち伏せ。出社してきた加賀美に対し、川上がベレッタ22口径拳銃で3発発砲。内東は他の組員を牽制しました。加賀美は事務所から逃走を図りましたが、川上の追撃により腹部に3発の銃弾を受け重傷を負いました。川上と内東は車で逃走し、警察の非常線を突破して石和温泉へ向かいました。その後、石井隆匡の指示で横須賀へ戻り、自首しました。

抗争の終結

川上と内東が自首した翌日、鶴政会林一家の林喜一郎総長が加賀美の入院先を訪れ、引退を迫ります。加賀美は3日後に引退を表明し、稲川裕芳が石井と林を仲介し、加賀美一家への攻撃中止を指示しました。稲川は、加賀美の縄張りを石井に任せ、加賀美一家の代貸であった長崎と愚連隊「穴切りグループ」の首領・小森敬介を横須賀に呼び寄せ、甲府の新たな代貸としました。

抗争の影響

この抗争事件により、川上は殺人未遂で懲役12年、内東は懲役8年の実刑判決を受けました。また、川上の若衆2人もそれぞれ懲役5年と4年の実刑判決を受けました。

甲府戦争は、暴力団同士の抗争が社会に与える影響の大きさを改めて認識させる事件となりました。また、暴力団組織の内部抗争や縄張り争いが、一般市民の生活を脅かす危険性を示唆する出来事でもありました。

参考資料

* 大下英治 『首領　昭和闇の支配者　三巻』大和書房＜だいわ文庫＞、2006年、ISBN 978-4-479-30027-4 のP.237～P.247

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