甲戌条約

甲戌条約（こうじゅつじょうやく）とは

甲戌条約は、1874年に阮朝ベトナム国とフランス第二帝政の間で締結された条約です。この条約は、ベトナムが事実上フランスの保護下に入る転換点となりました。

この条約は、1862年に締結されたサイゴン条約（壬戌条約）を第一次サイゴン条約、そしてこの1874年の甲戌条約を第二次サイゴン条約と呼ぶこともあります。

条約締結の背景

1862年のサイゴン条約により、フランスはベトナム東部三省とサイゴン、ミトー、コンダオ島の割譲を認めさせ、1864年にはフランス領コーチシナ植民地を成立させました。当時、フランスは普仏戦争の敗北からの復興期にあり、コーチシナでの領土拡大が大きな国益をもたらさないという意見もありました。

しかし、コーチシナ総督であったマリー・ジュール・デュプレ提督は、ベトナムでのフランス勢力拡大が国益にかなうと考えていました。

こうした中、ベトナム北部紅河で武器貿易を行っていたフランス商人ジャン・デュピュイがベトナム官吏の制止を無視して貿易を続けたため、1873年にフランス海軍が派兵される事態が発生しました。フランシス・ガルニエ率いるフランス軍は首都タンロン（ハノイ）を陥落させましたが、ガルニエが謎の死を遂げたため、フランス政府はガルニエの行動を公認せず、ベトナムとの和約を急ぐこととなりました。

条約の内容

フランスとベトナムとの間で締結された甲戌条約の主な内容は以下の通りです。

ベトナムの独立と主権の承認: フランスはベトナムが独立した主権国家であり、どの国にも隷属しないことを認めました。ただし、匪賊征討時にはフランスが無条件で援助するという条件が付けられ、他列強国の関与を排除しました。
フランスによる軍事支援: フランスはベトナムに対し、軍艦5隻、大砲100基、槍1000本を贈呈し、陸海軍訓練教官と徴税専門家を派遣しました。
南部6省の割譲: ベトナムはフランスに南部6省を割譲しました。
信教の自由の保証: ベトナムは外国人宣教師の布教の自由とベトナム人の信教の自由を保証しました。
貿易の開放: クイニョン、ハイフォン、ハノイ、紅河流域が貿易のために開放されました。
フランスの権益の確保: フランスは貿易権を保持し、領事を置く権利を得ました。また、フランス領事とベトナム官吏が認める外国人の国内全域自由通行が保証され、外国人に対する訴訟はフランス領事が判断することと定められました。

条約の影響

甲戌条約は、ベトナムがフランスの保護下に入る契機となり、ベトナムの政治、経済、社会に大きな影響を与えました。この条約は、その後のベトナムの歴史を語る上で重要な出来事として位置づけられています。

この条約は、ベトナムにおけるフランスの影響力を強め、植民地化への道をさらに進めることとなりました。

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