甲斐ノ山福人

甲斐ノ山 福人

甲斐ノ山 福人（かいのやま ふくひと、本名：田草川 次夫）は、1921年（大正10年）3月4日に山梨県東山梨郡塩山町（現在の甲州市）で生まれた大相撲力士です。錦嶋部屋に入門し、小柄ながらも粘り強い相撲で活躍しました。現役時代の体格は身長170cm、体重113kgで、右四つからの寄りを最も得意としていました。

相撲人生の始まりと出世の遅さ

数え14歳となった1935年（昭和10年）5月場所で初土俵を踏みました。しかし、力士としてのスタートは順調とは言えず、「大蛇嶋」の四股名で初めて番付にその名が載るまでに3年近くを要しました。その後も出世はなかなか進まず、苦労が続きます。ようやく関取の地位である十両に昇進したのは、初土俵からおよそ9年が経過した1944年（昭和19年）1月場所のことでした。この昇進を機に、四股名を故郷である山梨県の旧称にちなんだ「甲斐ノ山」と改めました。

関取として、そして幕内へ

新十両昇進後も、幕下と十両を行ったり来たりする状態が続きました。しかし、4度目の十両昇進を果たした1950年（昭和25年）5月場所で転機が訪れます。この場所、13勝2敗という素晴らしい成績を収め、見事に十両優勝を果たしました。この勢いに乗り、翌9月場所では念願の新入幕を達成しました。

幕内では、170cmという当時の力士としては低い身長をむしろ利点に変えました。相手の懐に素早く潜り込み、下から攻める押し相撲で、幕内での地位を維持しました。最高位は1951年（昭和26年）9月場所の西前頭10枚目に留まりましたが、通算で12場所にわたり幕内で相撲を取り続けました。

現役引退と年寄生活

幕内から十両に陥落した後も土俵に上がり続けましたが、34歳となった1955年（昭和30年）1月場所では十両下位で大きく負け越し（2勝13敗）、幕下への降下が確実となりました。この結果を受けて、翌3月場所は初日から休場。この場所を最後に、長年にわたる現役生活に別れを告げました。

引退後は、後進の指導にあたるため年寄となります。最初は「立川」、続いて「田子ノ浦」の名跡を借株で襲名し、およそ9年半にわたり角界の発展に尽力しました。しかし、1964年（昭和39年）9月、元関脇・出羽錦が引退し田子ノ浦の名跡を正式に襲名することになったため、甲斐ノ山は名跡を返上し、日本相撲協会を離れて廃業しました。

廃業後

相撲界を離れた後は、東京都世田谷区で装飾用品店などを経営し、実業家として新たな道を歩んだと伝えられています。没年は明らかになっていません。

主な戦績

• - 通算成績: 227勝263敗12休（勝率.463）
• - 幕内成績: 83勝97敗（勝率.461）
• - 現役在位: 44場所
• - 幕内在位: 12場所
• - 各段優勝: 十両優勝 1回（1950年5月場所）

改名歴

• - 大蛇嶋（おろちじま、1938年1月場所 - 1943年5月場所）
• - 甲斐ノ山 福人（かいのやま ふくひと、1944年1月場所 - 1955年3月場所）

年寄名跡変遷

• - 立川 次男（たてかわ つぎお、1955年3月 - 1958年9月）
• - 田子ノ浦 次夫（たごのうら つぎお、1958年9月 - 1964年9月）

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