甲芸同盟

甲芸同盟の成立

甲芸同盟（こうげいどうめい）は、甲斐の武田氏と安芸の毛利氏との間で結成された歴史的な同盟で、特に信長に対抗するための枠組みとして重要な意味を持っていました。

同盟の背景

天正3年（1575年）5月21日、甲斐の武田勝頼が長篠の戦いで織田信長と徳川家康の連合軍に大敗を喫し、多くの重臣を失ったこの敗北は、将軍・足利義昭やその支持者にとって大きな打撃となりました。この状況を受けて、義昭は安芸の毛利輝元へと逃れ、その支配下にある備後国の鞆に移動しました。

その後、天正4年（1576年）5月7日、毛利氏は反信長の立場で立ち上がり、同盟関係の構築を進めます。義昭は勝頼に対して、毛利氏と協力して信長を討つように命じ、相互の連携を求めました。

武田と毛利の連携行動

特に6月16日には、勝頼が義昭や毛利氏への書状を送り、協力を示唆。同時に義昭は、毛利氏を通じて反信長勢力の結集を図りました。武田氏は石山本願寺を介して毛利氏と情報を共有し、互いの信頼関係を深めていくことになります。

7月13日から14日にかけて行われた第一次木津川口の戦いでは、毛利水軍が織田水軍を破り、物資を本願寺に運び込むことに成功しました。これは、武田氏などの反信長勢力にとって重要な勝利であり、両者の連携を強化する要因となりました。

同盟の成立

同年9月16日、勝頼は毛利輝元に対して信長を打倒するための条項を提案し、具体的な行動に移す決意を表明しました。これによって、甲芸同盟の正式な成立が宣言されたのです。両者は義昭への忠節を誓い、共同での戦略的行動を約束します。

輝元の出陣とその影響

天正6年（1578年）12月、輝元は有利な状況を利用しての上洛を決意し、そのために勝頼に対して徳川家康を攻撃するよう要請します。しかし、天正7年（1579年）1月、毛利氏の重臣が謀反を起こし、戦局が変動します。このため、輝元の出兵計画は延期となりました。

最後の展開

甲芸同盟の興隆は、最終的な結末を迎えることになります。天正10年（1582年）3月、武田勝頼が織田・徳川勢に攻め立てられ、自害に追い込まれる事件が発生します。同時期に毛利氏も信長側の圧力に晒されており、輝元は新たな同盟を結んで自身の立場を確保しようとしました。

勝頼の首級が京都で晒される中、信長は自身の武威を示すことで、毛利氏との同盟の破壊を狙ったのです。これにより、甲芸同盟は短期間での歴史的な結末を迎えることとなります。

参考文献

• - 平山優『武田氏滅亡』角川選書、2017年。
• - 藤田達生『明智光秀伝』小学館、2019年。
• - 光成準治『毛利輝元』ミネルヴァ書房、2016年。
• - 奥野高広『足利義昭』吉川弘文館、1996年。

甲芸同盟は、戦国時代における大名同士の連携とその複雑さを象徴するものであり、今なお多くの歴史的教訓を提供しています。

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