甲陽映画

甲陽映画：幻の剣戟映画会社

甲陽映画は、1936年（昭和11年）に設立され、翌1937年（昭和12年）に解散した、短命な日本の映画会社です。設立当時は、現在の兵庫県西宮市甲陽園本庄町にあった甲陽幼稚園付近の「甲陽撮影所」を拠点としていました。

設立の経緯

甲陽映画の設立には、極東映画社の移転が深く関わっています。元々、甲陽撮影所で映画製作をしていた極東映画社が、大阪府へ移転する際、羅門光三郎、市川寿三郎、綾小路絃三郎などのスター俳優や、下村健二、古海卓二（園池成男）、児井秀男（児井英生）といった監督たちが移転に反対し、甲陽園に残留しました。彼らが中心となり、1936年5月に甲陽映画が設立されたのです。

設立第一作は、下村健二監督の『元和三勇士』で、千鳥興業の配給により公開されました。

短命に終わった背景

甲陽映画は、設立当初こそ順調に見えましたが、1937年（昭和12年）には経営が悪化し、解散へと追い込まれます。その背景には、配給会社の変更が影響していました。

千鳥興業との提携を解消後、マキノ・トーキー製作所が配給を引き継ぎましたが、その後、自社配給に乗り出したことが経営難の大きな要因となりました。資金繰りが悪化し、製作体制を維持することが困難になったと考えられます。

今井映画製作所との提携で製作されたトーキー映画『快闘 富士の男伊達』が、最後の作品となりました。

所属俳優・スタッフのその後

甲陽映画の解散後、所属していた俳優やスタッフは、それぞれの道を歩みました。

市川寿三郎、綾小路絃三郎：極東映画へ復帰
大塚田鶴子、鳴戸史郎：全勝キネマへ移籍
羅門光三郎、若月輝夫、金井憲太郎、下村健二、児井英男：今井映画へ移籍
貴志洋子、中山介二郎、桜井京子：消息不明
園池成男（古海卓二）：廃業

主な作品

甲陽映画は短期間ながら、多くの作品を製作しました。以下に主な作品を挙げます。

元和三勇士（1936年、監督：下村健二）
あばれ長脇差（1936年、監督：児井秀男）
四谷怪談（1936年、監督：園池成男）
忍術誉れ仇討（1936年、監督：園池成男）
奇傑黒鷲 前篇/後篇（1936年、監督：下村健二）
柳生二蓋笠（1936年、監督：高見貞衛）
侠骨番随院（1936年、監督：園池成男）
大江戸の魔剣（1936年、監督：熊谷草弥）
どくろ大明 第一篇/第二篇/第三篇（1936年、監督：下村健二、高見貞衛）
旅鴉時雨街道（1936年、監督：勝見雅之）
若殿三勇士（1936年、監督：高見貞衛）
熱血御陣河原（1936年、監督：下村健二）
謎の影法師（1936年、監督：高見貞衛）
爆走白馬隊 前篇/後篇（1936年-1937年、監督：下村健二）
笹野名槍伝（1937年、監督：高見貞衛）
伝法葵くずれ（1937年、監督：勝見稚之）
豪快村越三十郎（1937年、監督：高見貞衛）
忍術浮島城（1937年、監督：勝見雅之）
深夜の紅独楽（1937年、監督：高見貞衛）
* 快闘 富士の男伊達（1937年、監督：下村健二、久保田富彦）

まとめ

甲陽映画は、短命ではありましたが、剣戟映画というジャンルにおいて、独自の存在感を示した映画会社でした。その作品群は、日本の映画史において、貴重な記録として残されています。

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