申叔舟

申叔舟（シン・スクチュ）：李氏朝鮮の激動期を駆け抜けた政治家

申叔舟（シン・スクチュ、1417年 - 1475年）は、李氏朝鮮初期の政治家、学者、外交官です。字は泛翁、号は希賢堂または保閑斎。諡号は文忠。高霊申氏の本貫を持ちます。世宗の時代に才能を開花させ、世祖の即位を助け、政界の頂点である領議政にまで上り詰めましたが、その過程で多くの批判も浴びました。

生涯と業績

1439年、文科に合格して官吏の道を歩み始めた申叔舟は、学問研究機関である集賢殿に登用され、その才能を発揮します。彼は語学にも堪能で、日本語や中国語を巧みに操り、外交官としても活躍しました。1443年には通信使の書状官として日本に赴き、室町幕府との外交交渉に携わっています。

申叔舟の功績として特に重要なのは、ハングルの創製と『東国正韻』の編纂への参加です。彼は鄭麟趾らと共に、世宗の命を受け、新たな文字の創造に尽力しました。また、義理の祖父である尹会と共に、世宗からの信頼も厚く受けました。

世宗没後、申叔舟は首陽大君（後の世祖）による権力奪取（癸酉靖難）に協力し、その地位を確立します。世祖の即位後、彼は大提学に任じられ、1462年には領議政に昇りつめます。世祖は彼を、唐の名臣・魏徴になぞらえたと言われています。

睿宗の即位後も、申叔舟は院相として承政院に入り、南怡の謀叛事件を鎮圧し、政敵を排除しました。その後、成宗に仕え、成宗の命を受けて『海東諸国紀』を著します。この書物は、彼がかつて日本を訪問した経験に基づいており、日本の地理、歴史、文化、社会風俗について詳細に記述されています。

晩年には、成宗に対して「日本と失和してはならない」と遺言を残したと伝えられています。

評価

申叔舟は、その才能と政治手腕によって、李氏朝鮮初期の政治において重要な役割を果たしました。しかし、彼は癸酉靖難において、端宗を裏切り、世祖を支持したことで、変節漢という批判も浴びています。世宗に重用された集賢殿の学者の中には、端宗の復権を図って処刑された者もおり、彼らとの対比によって、申叔舟の評価はさらに複雑なものとなっています。彼を批判する人々は、彼の名を冠した「スクチュナムル（緑豆もやし）」が傷みやすいことに例え、その変節を揶揄しました。

著書

海東諸国紀：日本の地理、歴史、文化、社会風俗について記述した書物。外交官としての経験と知識が活かされています。
東国正韻：ハングルの発音辞典。

登場作品

申叔舟は、その波瀾万丈な生涯から、多くの歴史ドラマや映画に登場しています。

大王世宗
王と妃
王女の男
王と私
韓明澮 〜朝鮮王朝を導いた天才策士〜
インス大妃
* 死六臣

まとめ

申叔舟は、李氏朝鮮初期の激動期を駆け抜けた人物であり、その才能と政治手腕によって、朝鮮王朝の発展に大きく貢献しました。しかし、その一方で、彼は権力闘争の中で変節を余儀なくされ、多くの批判も浴びました。彼の生涯は、政治の非情さと人間の複雑さを物語っています。

2024年7月3日、彼の肖像画は韓国の国宝に指定される方針となり、その歴史的価値が改めて評価されています。

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