男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け

男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け

『男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け』は、1976年に公開された『男はつらいよ』シリーズの第17作目です。本作では、寅次郎が旅先で出会う人々との温かい交流と、自身の成長が描かれています。

あらすじ

物語は、寅次郎が見た奇妙な夢から始まります。それは、家族や周囲の人々が人食い鮫に襲われるという恐ろしいものでした。夢から覚めた寅次郎は、久しぶりに柴又の「とらや」に帰ってきますが、些細なことから家族と喧嘩してしまい、家を飛び出してしまいます。

上野の焼き鳥屋で一人酒を飲んでいた寅次郎は、無銭飲食で店員に咎められているみすぼらしい老人を目にします。同情した寅次郎は老人の支払いを肩代わりし、二人で飲み明かします。その後、老人を「とらや」に連れて帰りますが、翌朝、老人は宿屋と間違えて横柄な態度をとってしまいます。家族から苦情を受けた寅次郎が老人を注意すると、老人はお詫びとして紙に落書きのような絵を渡します。

寅次郎がその紙切れを神保町の古本屋に見せると、店主はなんと7万円で譲って欲しいと言います。実は、この老人は日本画壇を代表する池ノ内青観画伯だったのです。驚いた寅次郎が「とらや」に戻ると、青観は既に帰宅していました。寅次郎たちは、そのことを残念に思います。そして、満男が青観に描いてもらった絵を破ってしまったことをきっかけに喧嘩になり、寅次郎は家を出て行ってしまいます。一方、さくらは、絵の代金7万円を池ノ内家に返しに行きます。

旅に出た寅次郎は、播州龍野で再び青観と再会します。龍野出身の画伯は、市で飾る絵を描くために招かれていたのです。画伯に請われて市の宴席に出席した寅次郎は、そこで美しい芸者「ぼたん」と出会います。二人は親しくなりますが、寅次郎は冗談で「いずれ所帯を持とう」と言ってぼたんと別れます。柴又に戻った寅次郎は、龍野での日々を懐かしく思い出していました。そんな時、ぼたんが突然「とらや」にやってきます。

実はぼたんは、客の鬼頭という男に貯めていた200万円を騙し取られており、その件で東京に来たのでした。その話を聞いた寅次郎たちは憤慨し、ぼたんを助けるために動き出します。タコ社長の助けも借り、鬼頭と交渉しますが、鬼頭は財産を隠蔽しており、泣き寝入りを迫ります。

怒った寅次郎は、鬼頭を懲らしめるために飛び出しますが、居場所が分からず困ってしまいます。そこで、寅次郎は青観の家を訪ね、ぼたんのために絵を描いてほしいと頼みます。しかし、青観は「絵は金儲けのためのものではない」と拒否します。寅次郎は画伯の頭の固さに暴言を吐いてしまいますが、青観は寅次郎の純粋な気持ちに心を打たれます。また、以前渡したはずの7万円を返されたことも知ります。

寅次郎の気持ちを知ったぼたんは感激し、鬼頭の居場所を知らない寅次郎はどこに行ったのだろうと周囲が疑問に思う中、東京を去ります。さくらはぼたんの気持ちに気付き、上野駅で寅次郎にそのことを伝えます。

再び龍野を訪れた寅次郎は、ぼたんと再会します。そして、「所帯を持とうと思ってやって来た」と冗談を言います。ぼたんは寅次郎を家に招き入れます。そこには、青観画伯が描いた牡丹の花の絵が飾ってありました。市から200万円で譲って欲しいと言われているが、ぼたんは「これは譲らない、一生の宝物にする」と告げます。寅次郎は東京の方角を向き、青観に感謝するのでした。

キャスト

車寅次郎：渥美清
さくら：倍賞千恵子
芸者ぼたん：太地喜和子
車竜造：下條正巳
車つね：三崎千恵子
諏訪博：前田吟
社長：太宰久雄
源公：佐藤蛾次郎
満男：中村はやと
観光課長：桜井センリ
龍野市市長：久米明
青観夫人：東郷晴子
飲み屋の女将：西川ひかる
鬼頭：佐野浅夫
大雅堂の主人：大滝秀治
御前様：笠智衆
志乃：岡田嘉子
池ノ内青観：宇野重吉

ロケ地

物語は、兵庫県たつの市、東京都足立区、千代田区、台東区、港区など、様々な場所で撮影されました。

エピソード

タイトルの「夕焼け小焼け」は、龍野出身の三木露風が作詞した『赤とんぼ』に由来しています。作中では、『赤とんぼ』の歌詞が市長室に飾られていたり、防災無線で流れたりします。また、劇中では、寅次郎とタコ社長の会話で、過去作に登場したタコ社長の息子が言及されています。

青観と志乃の会話は、シリーズ屈指の名場面として知られています。また、劇団民藝の重鎮である宇野重吉が、マドンナ以外では極めて異例の「トメ」でクレジットされています。宇野重吉は、実の息子である寺尾聰と本作で共演しています。さらに、岡田嘉子がソ連から帰国後、初めて映画に出演した作品でもあります。

スタッフ

製作：名島徹
企画：高島幸夫、小林俊一
監督：山田洋次
脚本：山田洋次、朝間義隆
原作：山田洋次
撮影：高羽哲夫
音楽：山本直純
美術：出川三男

受賞

本作は、第31回毎日映画コンクール日本映画優秀賞、第50回キネマ旬報ベスト・テン日本映画第2位など、多くの賞を受賞しました。

外部リンク

公式ウェブサイト
allcinema
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