男はつらいよ 寅次郎子守唄

男はつらいよ 寅次郎子守唄

『男はつらいよ 寅次郎子守唄』は、1974年12月28日に公開された「男はつらいよ」シリーズの第14作です。本作では、寅さんがひょんなことから赤ん坊の世話をすることになり、その騒動の中で人々の温かさに触れる物語が描かれます。また、シリーズを通して重要な役割を担う、3代目おいちゃんこと車竜造役の下條正巳が初登場する作品でもあります。

あらすじ

物語は、寅次郎が夢の中で「うぶすなの神」として登場し、子供のない夫婦に赤ん坊を授けるシーンから始まります。現実世界では、博が仕事中に怪我をしてしまいますが、幸い軽傷で済みます。その見舞いの際に、御前様との会話から、とらやの将来について話が及びます。そこへ旅から帰ってきた寅次郎が、自分が将来を考えていると語り始めますが、その大げさな話にとらやの一同は呆れてしまいます。不機嫌になった寅次郎は、またもや旅に出てしまうのでした。

寅次郎は九州の唐津で商売を始めますが、近くの呼子港で赤ん坊を連れた男と出会います。男は女房に逃げられたらしく、寅次郎は男を慰めて一席設けますが、翌朝、男は置き手紙を残して姿を消していました。残された赤ん坊を放っておけず、寅次郎は赤ん坊と共に柴又へ戻ります。とらやの面々は「寅に子供ができた」と大騒ぎになりますが、事情を聞いて誤解は解けます。しかし、今度は赤ん坊をどうするかで頭を悩ませます。

そんな中、赤ん坊が高熱を出し、博の世話になった病院へ連れて行くことになります。そこで働く看護婦の京子に、寅次郎が惚れてしまうのではないかと心配する博とさくら。案の定、京子がとらやを訪れたことで、二人は親しくなってしまいます。しかし、やがて赤ん坊の父親が現れ、とらやの面々は彼の無責任さを責めます。しかし、同伴していた踊り子の子供への愛情を知り、赤ん坊を父親に返すことにします。赤ん坊がいなくなったとらやは寂しくなりますが、京子のおかげでまた元気を取り戻します。

京子に誘われてコーラスグループに参加したさくらを見た寅次郎も、一緒についていきます。しかし、そこでまた不真面目な態度を取り、グループのリーダーである大川を悲しませてしまいます。さくらに叱られた寅次郎は、大川に謝罪し、二人は意気投合します。そのうち寅次郎は大川が京子に好意を抱いていることに気づき、恋愛指南を始めます。

同じ頃、京子はさくらに、亡き父への想いを語ります。その父は、見かけは良くなかったものの、母にとっては理想の男性だったそうです。そこへ酔った寅次郎と大川が帰ってきます。大川は寅次郎に背中を押され、京子に告白します。後日、大川を訪ねた京子の様子から、寅次郎は失恋したことを悟り、また旅に出るのでした。

正月、大川のアパートで開かれた新年会で、大川は京子との結婚を報告します。京子には、寅次郎から年賀状が届いており、そこには大川へのよろしくという言葉が書かれていました。一方、寅次郎は赤ん坊が気になり呼子を訪れます。そこで、赤ん坊を背負った踊り子と再会し、父親も仕事を得て一緒に暮らしていると知り、安心するのでした。

キャスト

車寅次郎：渥美清
さくら：倍賞千恵子
竜造：下條正巳
つね：三崎千恵子
博：前田吟
社長：太宰久雄
源公：佐藤蛾次郎
踊子：春川ますみ
佐藤幸夫：月亭八方
大川弥太郎：上條恒彦
木谷京子：十朱幸代
御前様：笠智衆

ロケ地

群馬県富岡市、安中市
佐賀県唐津市、呼子港
東京都足立区、江戸川区

その他

オープニングの曲が珍しいバージョンで、インストルメンタルが使われている。
江戸川合唱団が「ククウェチカ」や「ファニタ」を歌っている。
モーツァルトの「幻想曲 ニ短調 K.397」がBGMで使用されている。

スタッフ

監督：山田洋次
脚本：山田洋次、朝間義隆
* 音楽：山本直純


本作は、寅さんの人情味あふれる行動と、周囲の人々の優しさが胸を打つ作品です。また、下條正巳演じる3代目おいちゃんの初登場作品としても、シリーズファンには見逃せない作品です。

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