男性間性交渉者

男性間性交渉者（MSM）に関する詳細解説

はじめに

「男性間性交渉者（MSM：Men who have Sex with Men）」は、同性と性交渉を持つ男性を指す用語です。この用語は、個人の性的指向や性的アイデンティティ（ゲイ、バイセクシャル、ストレートなど）とは無関係に、性行動に基づいて定義されます。そのため、自身の性的指向をストレートと認識する男性も、MSMに含まれる可能性があります。

MSMの概念と歴史

MSMという用語は、主に後天性免疫不全症候群（AIDS）などの性感染症の流行を研究する疫学者の間で、1990年代から使用され始めました。性的指向やジェンダーアイデンティティといった複雑な要素を抜きにして、性行動に着目することで、性感染症の伝播経路をより明確に把握することを目的としています。

性的指向やジェンダーアイデンティティに基づいた分類では、性感染症リスクの特定が困難となる場合があります。例えば、バイセクシャル男性は異性愛者と同性愛者の両方の特徴を持つとされ、MSMの分類に含めるか否か曖昧になります。そこで、行動に基づくMSMという用語を用いることで、性感染症の流行をより正確に把握し、対策を講じることが可能になります。

MSMとゲイ、その他の関連用語

MSMとゲイはしばしば混同されますが、両者は明確に区別されます。MSMは性行動を基準とする一方、ゲイは性的指向と性的アイデンティティに基づく概念です。ゲイ男性は必ずしもMSMであるとは限りませんし、MSMである男性が必ずしもゲイであるとは限りません。

さらに、「同性愛」という言葉は、同性への性的・恋愛的魅力や感情を指します。これらの用語はそれぞれ異なる側面を強調しており、完全には一致しません。クエスチョニングやバイキュリアスなど、より多様な性的指向やアイデンティティを表現する言葉も存在します。

日本におけるMSM

日本においても、MSMに関する調査が行われています。2009年の調査では、日本成人男性におけるMSM人口は推計で約2%とされました。しかし、同性愛がタブーとされる社会的背景から、正確な数値把握は困難です。

トランスジェンダーとMSM

MSMはトランスジェンダーの人々を含めるか否かについては、議論があります。トランスジェンダー女性がシスジェンダー男性と性交渉を行う場合、MSMに含めるか否かについては、性器などの身体性、そしてトランスジェンダー女性のアイデンティティをどう捉えるかによって意見が分かれます。

健康問題

MSMは、HIV/AIDS、B型肝炎、梅毒、ヒトパピローマウイルス（HPV）など、いくつかの性感染症に感染するリスクが高くなっています。特に、無防備な肛門性交は、HIV感染リスクを高めることが知られています。

HIV/AIDS

世界的に、男性間性交渉がHIV感染の原因とされる割合は5～10％程度です。しかし、アメリカ合衆国など一部の国では、MSMにおけるHIV感染率は一般人口と比較して非常に高いことが報告されています。

B型肝炎

B型肝炎ウイルス（HBV）は、血液や体液を介して感染します。無防備な性交渉も感染経路となりうるため、MSMは感染リスクが高くなります。

その他の性感染症

MSMは、梅毒、HPV、ジアルジア症など、その他の性感染症の感染リスクも高くなっています。

メンタルヘルス

LGBTの人々は、社会的な偏見や差別、法的権利の制限などから、メンタルヘルスの問題を抱えるリスクが高いとされています。

結論

MSMは、性行動に基づいた疫学用語であり、個人の性的指向やアイデンティティとは無関係に用いられます。MSMは性感染症のリスクが高い集団であるため、適切な予防対策と啓発が重要です。また、社会的な偏見や差別を解消し、LGBTの人々が安心して暮らせる社会を作ることも不可欠です。

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