町田市立てこもり事件 (2007年)

町田市立てこもり事件（2007年）

2007年4月に神奈川県相模原市と東京都町田市で発生した、暴力団員による拳銃を使用した事件です。この事件をきっかけに、暴力団組員の公営住宅からの排除を目的とした条例改正が全国的に進められました。

事件の概要

2007年4月20日、指定暴力団極東会系の組員の男(当時36歳)が、相模原市内のコンビニエンスストア前で、同じ極東会系の組員(当時37歳)を拳銃で射殺しました。

その後、男は町田市内の自宅（都営住宅）に立てこもり、駆けつけた警察車両に対し、窓から拳銃を9回発砲。パトカーに4発、付近の公園の公衆トイレに4発が命中しました。

男が所属していた極東会系の金原組は、町田市や相模原市を拠点とする約150人の構成員を抱える、町田市内では最大規模の勢力でした。男は、相模原市内の縄張りの取りまとめ役の部下でした。

警察の対応

警視庁は300人体制で現場を封鎖し、半径250mを立ち入り禁止区域に設定。男に対し、携帯電話を通じて投降を呼びかけました。近隣の小中学校では、児童・生徒を学校待機させたり、集団下校、保護者同伴での下校などの措置が取られました。

神奈川県警察は、男が町田駅付近の利権を巡るトラブルで組員を射殺したと判断し、殺人容疑で逮捕状を請求しました。

翌21日午前3時過ぎ、警視庁特殊犯捜査係(SIT)が催涙弾を使用し突入。午前3時17分、男を銃刀法違反（拳銃所持）の現行犯で逮捕しました。

突入時には、男が玄関から逃走するのを防ぐため、ドアを内側から開けられないようにする措置を講じました。また、催涙ガスで男をベランダ側に追い込み、身柄を確保する作戦が実行されました。突入の3時間前から、都営住宅の空き部屋でシミュレーションが行われ、ベランダをブルーシートで覆いながら、無線で突入手順の確認が行われました。

突入前、男は拳銃で自殺を図りましたが、捜査員の呼びかけに応じたため、現行犯逮捕に至りました。

都営住宅の捜索の結果、男は自動式拳銃「マカロフ」2丁と、約40発の銃弾を所持していたことが判明しました。

事件の影響とその後

事件後、暴力団員が都営住宅に入居・同居できるという事実が判明し、入居審査の不備が指摘されました。男は2001年3月から都営住宅に入居しており、一時自治会会長を務めていたこともありました。

事件を受け、相模原市は市営住宅から暴力団員を排除する方針を決定し、市営住宅条例改正案を市議会に提出。神奈川県も同様の条例改正案を提出し、厚木市や鎌倉市など、県内各地で暴力団排除に向けた条例改正の動きが広がりました。

この事件の約1ヶ月後には、元暴力団組員の男が元妻を人質に立てこもり、SAT隊員が射殺される長久手発砲立てこもり事件が発生しています。

捜査と裁判

男は銃刀法違反で現行犯逮捕されましたが、銃弾が頭部を貫通し重体となったため、治療に専念させる目的で釈放されました。その後、男は自殺未遂の後遺症で失明しましたが、歩行や会話が可能になるまで回復したため、警視庁組織犯罪対策部と町田警察署は、殺人未遂と銃刀法違反容疑で逮捕状を取得しました。なお、男は事件後に極東会から破門されています。

2007年6月30日、警視庁は男を殺人未遂、銃刀法違反容疑で逮捕しました。

2007年7月20日、東京地検八王子支部は男を殺人未遂、銃刀法違反、公務執行妨害などの罪で起訴しました。

2007年7月30日、神奈川県警察は相模原市での組員射殺事件について、男を殺人容疑で再逮捕しました。

2007年8月20日、横浜地検は男を殺人、銃刀法違反の罪で起訴。町田市の立てこもり事件と相模原市の組員射殺事件は、横浜地裁で併合審理されることになりました。

横浜地裁での第一審では、男は相模原市の組員射殺については起訴事実を認めましたが、町田市の立てこもり事件における警察官に対する殺人未遂については否認しました。

検察側は無期懲役を求刑し、裁判所は2008年3月17日、求刑通り無期懲役の判決を言い渡しました。判決では、警察官への殺意を認定し、弁護側の主張を退けました。

東京高裁も一審判決を支持し、被告側の控訴を棄却しました。

この事件は、暴力団対策の強化と、公営住宅における入居審査の厳格化を促す契機となりました。

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