畑崎広敏

畑崎廣敏氏は、1936年10月3日に兵庫県津名郡鮎原村（現在の洲本市五色町鮎原）に生を受けました。六人兄弟の四番目にあたり、次男として農家の家庭に育ちました。

1955年、兵庫県立洲本商業高等学校（現・兵庫県立洲本実業高等学校）を卒業後、金融業界への就職を志し、大手都市銀行の採用試験に挑みますが、最終選考で惜しくも採用には至りませんでした。その後、恩師の紹介を経て、神戸市に拠点を置く株式会社光商会（現在の株式会社エンパイヤー）への入社が決まります。

光商会は、当時従業員が約20名ほどの小規模な企業でしたが、畑崎氏は入社当時から将来的な独立を視野に入れていました。在籍した約4年間で、商品の企画から営業活動に至るまで、事業運営の様々な側面に携わり、幅広い経験を積みました。

1959年1月には、光商会時代の先輩であった木口衛氏と共に株式会社ワールドを設立。畑崎氏は専務取締役に就任し、主に商品の企画開発と販売戦略の推進を担いました。

ワールドの事業が軌道に乗る中で、1967年に欧州を視察する機会を得ます。そこで、一見するとシンプルなシャツやセーターを身につけた女性たちが、非常に洗練されて見えたことに触発され、全身のバランスを考慮した着こなしの重要性を深く認識しました。この気づきから、衣服だけでなく、バッグやアクセサリーといった小物まで含めた総合的なスタイル提案による販売手法を創出します。この「トータルコーディネート」という概念の導入は、その後の同社の飛躍を支え、上場企業へと成長させる大きな原動力となりました。

現在は、有能な投資家としても広く知られており、バナーズ、宮入バルブ製作所、ユナイテッドアローズ、キムラタンといった複数の上場企業で主要な株主の一人として名を連ねています。

実業界での活躍に加え、多岐にわたる分野で要職を歴任しています。1996年4月から2006年6月までユナイテッドアローズの取締役を務めたほか、兵庫エフエムラジオ放送取締役、日本創研代表取締役、神戸経済同友会幹事、神戸商工会議所副会頭などを歴任しました。また、2011年ラグビーワールドカップ日本招致委員会委員や、社団法人神戸納税協会の会長も務めるなど、社会活動にも積極的に関与しました。

家族としては、長男である畑崎充義氏がワールドの取締役を務めており、次男には漫画家の樹崎聖氏がいます。

畑崎氏の経営哲学やワールドの急成長に関する詳細については、関連図書として山川泰治氏著の『ワールド急成長の軌跡 - 畑崎広敏の人と経営』（商業界、1983年）が刊行されています。

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