留守氏

留守氏：奥州を舞台にした武家一族の興亡

留守氏は、藤原北家道兼流を祖とする武家・士族です。その歴史は鎌倉時代まで遡り、奥州の支配を巡る争乱や、伊達氏との複雑な関係の中で、栄枯盛衰を繰り返しました。本稿では、留守氏の歴史を詳細に解説します。

鎌倉時代：陸奥国留守職の世襲

留守氏の祖である伊沢家景は、当初は公家に仕える侍でしたが、北条時政に見出され、源頼朝に仕えることとなります。源頼朝による奥州征伐後、1190年（建久元年）、家景は陸奥国留守職に任じられ、多賀国府に入封しました。その後、家景の子孫が留守職を世襲するようになり、これが留守氏を名乗るようになった始まりです。

鎌倉時代を通じて、留守氏は陸奥国府多賀城を拠点に勢力を拡大していきましたが、陸奥国の大部分が北条氏の所領となると、留守職の権威は次第に低下していきました。しかし、北条氏の国守の地位も同様に形骸化しており、留守氏が陸奥国の統治において実務を担っていたという説もあります。

南北朝・室町時代：国人領主として

南北朝時代に入ると、留守氏は岩切城を拠点とする国人領主として台頭します。当初は南朝方として活動していましたが、後に北朝方に転じ、その後は足利尊氏や大崎氏らと複雑な関係を築きながら勢力を維持しようとしました。観応の擾乱では足利尊氏方につきましたが、岩切城が陥落するなど、大きな打撃を受けました。この後、留守氏は同族である国分氏と宮城郡の支配権を巡って長く争うことになります。

15世紀に入ると、留守氏は伊達氏の庇護を求め、伊達氏から次々と養子が送り込まれるようになります。これにより、留守氏は次第に伊達氏の影響下に置かれることになります。天正18年（1590年）、小田原征伐に参陣しなかったため、奥州仕置によって本領を没収され、以降は伊達政宗に仕えることとなります。

江戸時代：水沢伊達家

文禄2年（1593年）、留守政景は伊達姓を与えられ、伊達家の一門に列しました。その後、政景の子孫は一関、金ケ崎などを治め、寛永6年（1629年）、宗利が胆沢郡水沢城（水沢要害）に入りました。以降、幕末まで水沢を治めたことから、この家系は水沢伊達家と呼ばれるようになりました。水沢伊達家の禄高は1633貫588文、家臣団は808家におよびました。水沢伊達家からは、高野長英、後藤新平、斎藤実といった著名な人物を輩出し、「水沢の三偉人」として称えられました。

明治維新以降：士族として

戊辰戦争後、仙台藩が水沢伊達家領を没収したため、留守邦寧は領地を失いました。その後、旧姓である留守氏を名乗り、士族として明治時代を過ごしました。水沢伊達家の旧臣の多くは北海道に移住しました。華族に列せられる機会もありましたが、最終的には士族としてその歴史に幕を閉じました。

系譜と参考文献

留守氏の系譜は複雑で、多くの養子が含まれています。正確な系譜を把握することは、歴史研究において重要な課題です。本稿では、主要な歴代当主をリストアップし、系図を示しました。また、本稿の記述にあたり、多くの文献資料を参照しました。それらの文献を以下に示します。

参考文献

利府町誌編纂委員会 編『利府町誌』
水沢市史編纂委員会『水沢市史』
斎藤子爵記念会『子爵斎藤実伝』
松田敬之『〈華族爵位〉請願人名辞典』
* その他、多数の史料

まとめ

留守氏は、鎌倉時代から明治時代まで、奥州の歴史に深く関与した重要な一族です。その歴史は、奥州の支配を巡る争乱、伊達氏との複雑な関係、そして時代の変遷の中で翻弄されながらも、独自の道を歩んできたことを物語っています。今後の研究により、より詳細な歴史が明らかになることが期待されます。

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