留萌港

北海道留萌港：激浪と歴史が刻む港湾の物語

北海道留萌市に位置する留萌港は、単なる港湾の枠を超え、北海道北部経済を支える重要な拠点として、そして幾多の自然の試練を乗り越えてきた歴史を持つ港湾です。港湾法上の重要港湾、港則法上の特定港に指定されており、留萌市をはじめとする留萌振興局、旭川市を中心とする上川・空知地方の物資流通の中枢を担っています。同時に、豊かな漁場である日本海を舞台とする沿岸漁業の基地としての役割も果たしています。

世界三大波浪港：自然の猛威と人間の挑戦

留萌港の最大の特徴は、その激しい波浪です。特に冬季は日本海からの強風が吹き荒れ、かつては「冬季西風の強吹するとき風速28メートルを超えること珍しからず、高さ6メートル以上の波浪が防波堤に激しく打ち寄せ、その勢いは猛烈を極める」と形容されたほどです。その波の激しさから、インドのマドラス（現在のチェンナイ）、イギリス・スコットランドのウィックと並んで「世界三大波濤」または「世界三大波浪港」と称されるほどでした。

このような過酷な自然環境の中、建設された南防波堤は、まさに技術力の粋を集めた建造物です。建設途中では、巨大な波によってコンクリートケーソンが破壊・移動するなど、数々の困難に見舞われました。その稀有な難工事の歴史、そして幾度もの改修の歴史は、2010年に土木学会選奨土木遺産として認められるほどです。

港湾施設：近代化された設備と機能

留萌港は、外郭施設、係留施設、荷さばき施設など、近代的な港湾施設を備えています。大型船が接岸可能な岸壁、広大な荷さばき地、そして倉庫などの荷役施設が整備され、多様な貨物の効率的な取扱いを可能にしています。古丹浜ふ頭、三泊地区など、複数の地区にわたって岸壁や荷さばき地が整備され、港湾としての機能は着実に強化されています。

歴史：アイヌ文化から近代化へ

かつて留萌川の河口付近には、「ルルモッペ」（潮の静かに入るところ）と呼ばれたアイヌの集落がありました。場所請負制が始まると、交易船が行き交うようになり、運上屋が開かれました。明治時代に入ると、漁獲物や木材を本州へ運ぶ船舶が増加したことを受け、イギリス人技師の調査・計画を基に、築港運動が活発化しました。

1909年、国による築港が許可され、翌年から第一期拓殖計画の一環として工事が開始されました。計画変更や事業期間延長などの影響を受けながらも、第二期拓殖計画へと引き継がれ、1933年に近代的な港湾として完成しました。

この過程において、1929年には留萌鉄道が岸壁築造を含む工事を担当し、民間企業が築港事業に携わった日本初の事例となりました。

エネルギー転換と港湾の進化

近郊に存在した大和田炭鉱など複数の炭田（留萌炭田）の影響もあり、留萌港は当初、石炭の積み出し港として発展しました。木材の輸出も盛んであったことから、港には石炭積込機（石炭ローダー）が設置されました。

その後、エネルギー転換によって石炭から石油へのシフトが起こると、留萌港は古丹浜地区や三泊地区に大型岸壁を整備するなど、流通拠点港としての機能強化を図り、現代に至るまで発展を続けています。

激浪との戦い：そして未来へ

南防波堤の建設から現在に至るまで、留萌港は幾度となく襲来する激浪と戦い続けてきました。消波ブロックの増強など、様々な対策が講じられてきました。2017年には西防波堤の灯台が暴風雪による高波で倒壊するなど、自然の猛威を改めて見せつけられる出来事がありましたが、2021年には復旧が完了しています。現在も、南防波堤の拡幅・嵩上げ工事が予定されており、今後も自然災害への対策は継続されていくでしょう。

留萌港は、激浪という厳しい自然環境の中で築かれ、発展を遂げてきた歴史を刻む港湾です。これからも、北海道北部の経済発展に貢献し、その歴史を未来へと繋いでいくことでしょう。

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