異斯夫

異斯夫（いしふ）

異斯夫（いしふ、生没年不詳）は、6世紀の新羅の将軍であり、王族の一員でした。姓は金、諱は苔宗（たいそう）。『日本書紀』には伊叱夫礼智干岐（いしふれいちかんき）あるいは伊叱夫礼知奈末（いしふれいちなま）という名で記されています。奈勿尼師今（なもるにしかん）の4世孫にあたり、智証麻立干（ちしょうまりっかん）から真興王（しんこうおう）の時代に仕えました。

生涯

505年、智証麻立干の時代に初めて軍主（ぐんしゅ）という職位に就き、512年には伊飡（いさん、2等官）に昇進、何瑟羅州（はつらじゅう、現在の江原道江陵市）の軍主となりました。この頃、于山国（うさんこく、鬱陵島）を攻略し、服属させています。529年には卓淳国（たくじゅんこく）の熊川（ゆうせん）で近江毛野（おうみのけな）を撃退、531年には久礼牟羅（くれむら）から百済軍を退けました。532年には、居道（きょどう、コド）の計略を用いて伽耶を滅ぼすことに貢献しました。541年には兵部の令（へいぶのれい、長官）に任ぜられ、内外の軍事を統括しました。550年には、百済と高句麗の争いの隙をつき、両国間の係争地であった道薩城（どうさつじょう、忠清北道槐山郡）と金峴城（こんけんじょう、忠清北道鎮川郡）を奪取。高句麗の反撃を退け、逆に追撃して大勝しました。562年には、反乱を起こした伽耶（大伽耶）討伐軍の主将となり、斯多含（したどん）と共に伽耶を再び服属させることに成功しました。

異斯夫は軍事的な才能を発揮する一方で、文化面でも貢献しました。545年には国史編纂を上奏し、真興王はこれを受け入れ、居柒夫（こつしつぶ）らが新羅初の国史を編纂することになりました。

于山国討伐の計略

于山国（鬱陵島）は、江原道の東海に浮かぶ島国で、新羅からの距離を恃み、服属していませんでした。異斯夫は何瑟羅州軍主として、于山国の人々が勇猛だが思慮が浅いことを見抜き、武力ではなく計略で服属させることを決意しました。彼は木製の獅子像を多数作り、船に並べて于山国の岸に近づき、「服従しなければ、この獣を放ち、お前たちを踏み殺させる」と脅しました。于山国の人々は恐れて降伏しました。この話は『三国遺事』にも記録されています。

伽耶討伐の計略

異斯夫は、居道が于尸山国（うしさんこく、蔚山広域市）と居柒山国（こつしつさんこく、釜山広域市東萊区）を滅ぼした際に行った計略を参考にしました。居道は、多くの馬を集めて兵士に駆け回らせる遊戯を繰り返し、両国の人々に見慣れさせました。そして、両国の人々が兵馬に警戒しなくなった頃に急襲し、滅ぼしました。異斯夫も同様に、馬を使った計略で伽耶を滅ぼしたと伝えられています。

異斯夫は、卓越した軍事的手腕と知略、そして文化的な貢献によって、新羅の発展に大きく寄与した人物として後世に名を残しています。

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