発達障害者支援法

発達障害者支援法とは

発達障害者支援法（平成16年法律第167号）は、自閉スペクトラム症、注意欠陥・多動性障害（ADHD）、学習障害（LD）といった様々な発達障害のある人々が、その能力を活かして地域社会で自立し、社会参加できるよう、総合的な支援を行うことを目的とした日本の法律です。

法の概要と目的

この法律は、それまで福祉制度の中で十分に位置づけられていなかった発達障害のある人々に対する支援の基盤を確立するため、2005年（平成17年）4月1日に施行されました。全25条から成り、発達障害の定義を明確にするとともに、早期発見・早期支援、個々の特性に応じた教育的・福祉的・医療的な援助、就労支援、地域生活支援などを、国や地方公共団体、そして国民（社会全体）の責務として定めています。初めて発達障害のある人への支援に関する基本的な考え方や、国・自治体の役割を法的に明文化した点に大きな意義があります。

主な構成

法は以下の4つの章で構成されています。

第1章 総則（1条～4条）
法の目的、ここで使われる用語の定義、国や地方公共団体、国民の果たすべき役割や責任について記されています。
第2章 児童の発達障害の早期発見及び発達障害者の支援のための施策（5条～13条）
乳幼児期における早期の発見と支援の重要性を強調しつつ、保育、教育、就労、地域での生活など、発達段階や生活の様々な場面に応じた支援のあり方、権利擁護、家族への支援などが規定されています。地方公共団体が中心となってこれらの施策を進めることが求められています。
第3章 発達障害者支援センター等（14条～19条）
発達障害のある人やその家族への相談支援、関係機関との連携調整を行う専門機関である「発達障害者支援センター」の役割や運営に関する事項、専門的な医療機関の整備などが定められています。都道府県に対し、これらの支援体制を整えるよう要請しています。
第4章 補則（20条～25条）
発達障害のある人を支援する民間の活動へのサポート、発達障害に関する国民への正しい理解の普及啓発、医療・保健・福祉・教育・労働など様々な分野の専門職に対する研修、調査研究の推進などが盛り込まれています。

平成28年改正による変化

2016年（平成28年）には、障害者権利条約の発効や社会情勢の変化を踏まえ、法律の一部が改正されました。主な改正点は以下の通りです。

支援の目的として、発達障害のある人々の日常生活や社会生活における障壁（社会的障壁）の除去を明確に位置づけました。
乳幼児期から高齢期に至るまで、切れ目のない継続的な支援体制を強化することが求められ、教育、福祉、医療、労働などの関係機関の緊密な連携が重要視されました。
司法手続きにおいて、発達障害のある人が適切に意思疎通できるための配慮を確保することが規定されました。
就労支援が強化され、国や都道府県は就労の定着を支援するとともに、事業主に対して、発達障害のある人の特性に応じた適正な雇用管理を行うよう求める規定が盛り込まれました。
教育現場における個別支援計画・指導計画の作成推進、いじめ防止対策、関係機関との連携強化などが盛り込まれました。
発達障害者支援センターの設置が進むよう、都道府県や政令指定都市に関係機関による協議会の設置が促されました。

法における「発達障害」等の定義

この法律において、発達障害は「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」と定義されています（2条1項）。政令や厚生労働省令、通知により、言語の障害、協調運動の障害、心理的発達の障害、行動及び情緒の障害などが含まれることが具体的に示されており、吃音やトゥレット症候群も含まれるとされています。

また、「発達障害者」とは、発達障害があり、かつ発達障害及び社会的障壁により日常生活または社会生活に制限を受ける者、「発達障害児」は発達障害者のうち18歳未満の者と定義されています（2条2項）。「発達支援」は、これらの人々が社会生活を円滑に送れるよう、特性に応じた医療的、福祉的、教育的な援助を指します（2条4項）。

発達障害者支援法は、発達障害のある人々が社会の一員として尊重され、安心して暮らせる社会を実現するための重要な法的基盤となっています。

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